HOME4.市場・運用 |事業で使用する電力を「再エネ100%化」宣言のリコーとソニー両社トップ、国内の再エネコストの高さに懸念表明。石炭火力偏重の電力の供給体制変革を求める。「気候変動イニシアティブ(JCI)」会合で(RIEF) |

事業で使用する電力を「再エネ100%化」宣言のリコーとソニー両社トップ、国内の再エネコストの高さに懸念表明。石炭火力偏重の電力の供給体制変革を求める。「気候変動イニシアティブ(JCI)」会合で(RIEF)

2018-10-12 20:04:49

JCI1キャプチャ

 

 気候変動対策に取り組む企業や自治体、NGOなどの非国家アクターのネットワーク「気候変動イニシアティブ(JCI)は12日、「気候変動アクション日本サミット」と題するカンファレンスを東京で開いた。会合には再生可能エネルギー100%転換を宣言する「RE100」に参加したソニーの平井和夫会長と、リコーの社長の山下良則社長も出席。両氏は、再エネ100%を国内で実現する上で、既存電力会社のCO2排出係数の高さが大きなネックであるとの認識を共通して語り、電力供給サイドの改革の必要性を求めた。

 

 JCIの会合には、JCIがモデルとする米国の気候変動対策を求める非国家アクター・ネットワークの「アメリカズ・プレッジ(America’s Pledge)」の副議長のカール・ポープ氏や、英CDPのエグゼクティブチェアのポール・ディキンソン氏の2人が基調講演を行い、企業関係者、自治体、NGOらによる複数のパネルが開かれた。http://rief-jp.org/ct8/80811

 

 その中で、先ごろ「RE100」への参加を表明したソニーの平井会長が、「われわれは2010年から『Go to Zero』を掲げ、CO2など環境負荷ゼロを目指してきた。今般、より積極的に打って出るということを社外にも示す活動の一環として『RE100』に参加した。ただ、日本では再エネコストが高く、欧米の数倍、数十倍する」と指摘、日本での再エネ市場が十分に機能していないことに不満を示した。

 

JCI2キャプチャ

 

 「RE100」に日本企業として最初に参加したリコーの山下社長も、「昨年4月に参加したが、その理由のひとつには、電力の需要者側の姿勢をはっきりしないと、(電力の)供給者側が変わらないのではとも思ったからだ。わが社の使用電力のうち、欧州などでの事業活動分はすでに(コストが安いので)100%再エネ化できている。国内が課題だ」と語った。

 

 両経営トップが異口同音に述べたのは国内電力の排出係数が高く、再エネ調達コストが高いという点だ。CO2排出係数は、電力の「CO2排出量÷販売電力量」で算出されるもので、「kg-CO2/kwh」で表示される。発電燃料が石炭等の化石燃料だと、CO2排出量が多くなるので、販売量が一定だとすると、係数は高くなる。再エネ電力でCO2排出量が極めて少ないと、分子が小さいので係数は小さくなる。

 

 欧米ではこのところ、主要な電力会社も再エネ発電比率が上昇している。また再エネに特化した電力市場も拡大している。こうしたことからCO2排出係数は一般の電力でも低下傾向にあり、再エネ電力の調達のし易いことから、電力需要側の企業の再エネ調達は比較的容易で、コストも対応し易いとされる。ところが日本の主要な電力会社は石炭火力発電が主流のため、排出係数の低下見通しが限られ、再エネ調達コストが高止まりしているのが実態だ。

 

 両氏は、電力会社を正面から批判はしなかったが、「欧米の投資家はESGの評価が投資の選定に影響するようになっている。顧客もそうだ。海外の投資家や顧客はそうした動きに乗っているので、もう待ったなしだと思っている。(再エネの)コストがかかるというが、もうコストではないところに来ている」(山下氏)とも指摘。企業活動や投資の世界がグローバルに共通化してきたことに合わせて、国内電力の供給側の変革の必要性を示唆した。

 

 米国ではAppleなどのように、自ら太陽光などの再エネ発電を大規模に展開して、すでに再エネ比率を100%化しているところもある。ただ、投資余力のある企業はそうした自前での対応が可能になる。だが、中小企業も含めたサプライチェーン全体を見据えると、両氏が指摘するように、既存電力の再エネ比率をあげる「電力供給サイドの改革」が必要になる。

 

 また国・自治体のCO2排出量をネットゼロにする「カーボン・ニュートラル連合(CNC)に参加している横浜市の奥野修平温暖化対策統括本部副本部長は、「大変大きな目標だが、(市として)覚悟を決めたということ。行政だけでもできないので、市民の力、企業の力を借りて進めていく。目標は2050年80%削減で、100%削減は今世紀末だが、『最速』を視野に入れて、2050年には実質ゼロを目指したい」と語った。http://rief-jp.org/ct8/83367

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