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世界銀行、旧ユーゴのコソボでの大規模石炭火力発電事業から撤退を表明。世銀最後の石炭火力融資。「再エネのほうがコストが安い」とKim世銀総裁が言明(RIEF)

2018-10-15 08:12:40

Cosovo1キャプチャ

 

  世界銀行は、同行が対象としていた旧ユーゴのコソボでの石炭火力発電事業へのファイナンスを中止する姿勢を明らかにした。同事業は、世銀が現在抱えている石炭火力関連事業の最後のもので、世銀は石炭火力事業へのファイナンスから全面的に撤退することになる。

 

 (写真は、40年以上稼働している旧式の石炭火力発電所。しょっちゅう故障、停電する)

 

 インドネシアのバリで開いた会議で、Jim Yong Kim世銀総裁が明らかにした。コソボは、2008年の独立以来、経済復興・開発中。エネルギーは輸入に頼っており、その削減と安定的なエネルギー源確保のため、2015年、世銀と米企業のContourGlobal(CG)社が、旧式の石炭火力をリプレースを軸とする大規模なエネルギー計画「Kosova e Re」を立ち上げ推進している。

 

Jim Yong Kim世銀総裁
Jim Yong Kim世銀総裁

 

 Kosova e Reプロジェクトは、同国で豊富な資源である褐炭を利用した石炭火力発電事業のほか、再生可能エネルギー事業などを合わせて、総排出量500MWの発電量を確保し、総額13億ユーロの投資を想定している。

 

 同国は、国内のエネルギーは、輸入エネルギーと、旧ユーゴスラビアのチトー時代に建設された2機の旧式石炭火力発電所に頼る状態が続いている。その石炭火力は、故障、停電、猛烈な大気汚染などの原因となっており、市民からの苦情の対象にもなっている。

 

 バリでの会合でKim世銀総裁は、コソボの石炭火力事業へ融資する銀行団への信用補償を続けるかどうかと市民団体から問われ、「バルカンの案件については、われわれは石炭火力事業をもはや進めないという非常に確固とした決定をした」と明確に、ファイナンスの停止を宣言した。

 

Kosovo e Re計画の完成想像図
Kosovo e Re計画の完成想像図

 

 Kim総裁はそうした決定の理由として「世銀は基本スタンスとして、『最小コスト』を選択する原則を持っている。今や再エネ発電のコストは石炭火力よりも低く発電できるレベルとなっている。したがって、問題なく、われわれは(石炭火力への支援を)もはや続けることはない」と述べた。

 

 ただ、今回のKim総裁の「コソボ撤退」発言が、Kosova e Reプロジェクト全体へのファイナンスをすべて取り止めるのか、該当する石炭火力プロジェクト分の信用保証だけなのか、あるいは石炭火力支援予定分を再エネ事業に上乗せするのか、といった細部については明確には示していない。

 

 コソボのRamush Haradinaj首相は先月、Kosova e Reの建設は、年明けにも始まるだろうとの見通しを示したばかりだった。同計画への反対運動を展開してきた市民団体の 「Kosovo Civil Society Consortium for Sustainable Development (Kosid)」の創設メンバーのDajana Berisha氏は「世銀の判断を歓迎する。われわれの努力が報われたといえる。ただ、政府はプロジェクト支援のために、世銀以外の他の投資家を求める可能性がある」と警戒の姿勢も示している。

 

一部の関連工事はすでに始まっている
一部の関連工事はすでに始まっている

 

 世銀は2013年に融資政策を変更し、新規の石炭火力発電向けのファイナンスは「特別な場合(exceptional circumstances)」の場合以外は融資しない、とした。これまでKosova e Reについてはその「特別な場合」に該当するとしてきたが、再エネ事業のコスト低下が急速に進展していることを理由に、「特別性」がなくなったと判断したとみられる。

 

 CGの創業者兼CEOのJoseph Brandt氏は先月、「Kosova e Re関連の建設、運営の契約はすでにいくつか始まっている。同計画はコソボの将来のエネルギー供給に極めて重要だ」と計画変更の考えがないことを強調している。

 http://mzhe-ks.net/repository/docs/Kosova_e_Re_Brochure_ENG.pdf