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社会的投資推進財団(SIIF)による神戸と八王子での「ソーシャルインパクトボンド(SIB)」事業、ともに成果を達成。八王子では244万円の投資リターン支払い。神戸も来年支払確定(RIEF)

2018-10-28 17:43:49

SIIFキャプチャ

 

   ソーシャルインパクトボンド(SIB)事業を展開している一般財団法人社会的投資推進財団(SIIF)は、神戸市と八王子市で昨年から実施した事業で、いずれも目標を上回る効果があったと発表した。このうち、八王子市の事例では、当初想定通りの244万1000円を投資事業者に支払った。神戸市の事例は、2020年3月の最終評価後に支払い額を決定する。

 

 SIBは、医療・介護、教育、防犯、困窮者対策などの社会的課題について、公的機関による対応に代わり、民間の投資資金(発行するボンドへの投資家)と、課題改善のための民間の知恵・手法を組み合わせて効率化を図り、改善向上と負担軽減をする手法。課題解決に必要な行政コストを削減出来た場合、コスト低減に見合う投資リターンを投資家に還元する。

 

 2010年に英国で始まった官民連携のプロジェクトファイナンス手法と位置付けられている。神戸市での事業は、糖尿病性腎症等の重症化予防事業が対象。同腎症にかかっている109人を対象に、株式会社DPPヘルスパートナーズ(DPP)が、6ヶ月にわたる保健指導プログラムを実施、生活習慣を改善を進めた。その資金は、SIBに投資した三井住友銀行と、個人投資家が負担。

 

 結果として、対象者のうち、疾病等の事情で除外対象になった4 人を除く105人全員のプロ グラム修了率は目標値 80%に対し100%を達成。食事、運動、セルフモニタリング、服薬の4分野での生活習慣の改善を総合評価した生活習慣改善率は、目標値 75%に対し95%と高い成果を達成した。

 

 事業には、公益財団法人未来工学研究所が第三者評価を付し、「未受診者や治療を中断している糖尿病患者で自分の健康を気にしながらも自分では動きだせずにいる人に対して、うまくアプローチしてきっかけを与えれば、効率的な生活習慣改善 を促すことができる可能性が非常に高い」と指摘した。

 

 これを受けて神戸市は、市民のQOL(生活の質)の向上と、医療 費の適正化が期待されると評価している。2020 年 3 月に予定する最終成果評価を受けて、腎機能低下抑制率を指標として評価した結果に応じて、残りの委託料を支払うとしている。

 

 一方の八王子市での事業は、大腸がん検診受診率向上事業。受診率を向上させることで、精密検査受診率を高め、早期がん発見者数を向上させ、結果的に住民の大腸がん罹患率の低下と、自治体の医療負担コストの低減にもつなげようというもの。

 

 事業者となったキャンサースキャン社は、大腸がん検診受診率が特に低い層を対象に、AI を活用したオーダーメイドの受診勧奨を行った。同手法を使った検診受診勧奨を、2017年度は1万2162人に対して行った結果、受診率は2015年実績の9%から、17年度は26.8%と大きく伸び、事業の最大目標値とした 19%をも上回った。

 

 SIBはみずほ銀行のほか、個人投資家が購入した。この結果、八王子市は、大腸がん検診受診率に応じた支払額として、満額の244万1000 円を支払った。

 

 両事業とも、初期の目標を達成したことで、SIIFでは、日本でも、SIBの手法が社会問題の改善と行政のコスト削減、民間への新たな投資機会の提供等の効果を発揮できる、と評価。今後も事業の展開に力を入れていく方針だ。

 

 SIBは世界的に展開されており、2017年の調査では、現在、1140億㌦(約12兆7000億円)が運用されており、今後、2020年には3070億㌦(約34兆4000億円)に拡大すると期待されている。

 

http://www.siif.or.jp/wp-content/uploads/2018/10/181024_SIB%E7%A5%9E%E6%88%B8_%E4%B8%AD%E9%96%93%E6%88%90%E6%9E%9C%E8%A9%95%E4%BE%A1%E5%A0%B1%E5%91%8A.pdf

http://www.siif.or.jp/wp-content/uploads/2018/10/20181026_%E5%85%AB%E7%8E%8B%E5%AD%90SIB_%E4%B8%AD%E9%96%93%E6%88%90%E6%9E%9C%E5%A0%B1%E5%91%8A.pdf