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官民連携のグリーンファイナンス・ネットワーク(GFNJ)発足。都内で初のセミナー。グリーン資産の自己資本比率計算上の優遇論の是非などで活発な議論(RIEF)

2018-11-03 21:52:58

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   パリ協定の目標達成を視野に、グリーンファイナンスの日本での普及を目指す官民連携のネットワーク、「グリーンファイナンス・ネットワーク・オブ・ジャパン(GFNJ)」が2日、都内で発足記念のセミナーを開催した。初のセミナーには、霞が関の関係各省から複数の役人が個人の資格で参加したほか、大手金融機関の関係者等も参加、自由な議論を展開した。

 

 GFNJは、国連環境計画(UNEP)特別顧問の末吉竹二郎氏と、前OECD事務次長の玉木林太郎氏(金融情報センター理事長)が発起人となり、前OECD環境局上級政策分析官の高田英樹氏(現内閣参事官)が事務局長を務める形で立ち上がった。http://rief-jp.org/ct4/83572

 

事務局長の高田英樹氏
 GFNJ事務局長の高田英樹氏

 

 ネットワークには、高田氏以外に、10人前後の各省の現役官僚(財務、経産、外務、環境、金融の各省庁)が加わったほか、金融機関、機関投資家、学者、NGOなどの関係者が横断的に名を連ねている。

 

 この日のセミナーでは、まず現役官僚がグリーンファイナンスに関連した我が国の政策についての説明を行った。一方、金融機関関係者からは、それぞれの機関としての取り組みに加えて、日本のグリーンファイナンス市場の課題として、プロジェクト不足にどう対応するか、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)報告への対応、政府の役割としてソフト規制かハード規制か、などの論点が提示された。

 

 注目されたのは、再生可能エネルギー事業や省エネ事業向けのグリーン資産の積み上げを期待される金融機関側から、そうしたグリーン資産を金融機関の自己資本比率規制の評価・計算に際して優遇することを考慮してはどうか、との指摘が出た点だ。

 

 これはEUなどで、「Green Supporting Factor」として議論が続いているテーマで、グリーン投融資を促すために、それらの資産に対する自己資本比率規制での扱いを緩和しようという論法だ。欧州委員会や欧州議会に根強い支持の声がある。ただ、EUでも中央銀行を中心に、グリーン資産だからと言って、信用リスクが軽減されるわけではない、との慎重意見も多い。

 

 日本のグリーンファイナンス関連のセミナーで、「グリーン資産と自己資本比率規制の関連性」といった論点が取り上げられたのはあまり例がない。官民の従来のスタンスや枠組みにこだわらず、自由で弾力的な情報交換を進めるというネットワークの趣旨を踏まえた議論といえた。

 

 

 GFNJの立ち上げに対しては、英非営利団体Climate Bonds Initiative(CBI)代表のSean Kidney氏が「日本はグリーンファイナンスの分野で重要な存在感を持っている。GFNJは非常にエキサイティングなイニシアティブであり、大きな前進のドライバーになるだろう」との期待のメッセージを寄せた。