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石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェル、「脱石油会社」を目指す。再エネ投資、年間20億㌦へ倍増。日本でも洋上風力市場に関心。再エネ統括責任者が会見(各紙)

2018-11-29 14:01:55

BP1キャプチャ

 

 各紙の報道によると、石油メジャーの一つ、ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell Plc)の再生エネルギー事業統括役員のマーテン・ヴェツェラー氏は、「生き延びるために低炭素エネルギーの作り手、売り手になる必要がある」、「もはや石油メジャーではなく、電力などエネルギーのメジャーになる」などと語った。

 

 日本経済新聞のインタビューに答えた。同紙によると、ヴェツェラー氏は再生エネのほか液化天然ガス(LNG)の事業を担当し、上流(資源開発)担当役員らと並び、同社の執行部門では最高経営責任者(CEO)に次ぐ立場という。

 

 シェルの生産量(バレル換算)の現状は、石油とガスの化石燃料資源がほぼ5割ずつを占める。太陽光や風力の再エネ関連の発電量はごくわずかという。しかし、同氏は、「今後40年で世界のエネルギーミックスは大きく変わる」と指摘。特にエネルギー消費に占める電力の割合が現在の20%から50%超まで増えるうえ、電力の多くが二酸化炭素(CO2)の排出につながる石炭などを使わない「カーボンフリーになる」との見解を示した。

 

 こうした将来の事業環境の変化を踏まえて、「需要家から見て統合したエネルギー提供ができる企業になる必要がある」と述べた。その上で、再エネには「今後、20年にかけて年間20億㌦ほどの投資を続ける」とした。年間20億㌦は全社の投資金額からみると1割程度だが、多くの案件が他社との共同事業で実際の事業費はさらに大きくなると強調した。同社は16年に再生エネ事業を本格化し、同年の投資額は10億㌦弱だったので、倍増させることになる。

 

 同社は将来の具体的な事業構成については明らかにしていない。だが、ヴェツェラー氏は電力を重視する姿勢を示した。発電から小売りまで一貫した体制を築く考えだ。「将来的に何千万の規模の顧客を獲得し、世界で電力のリーディングプロバイダーになる」と強調した。

 

 同氏は電力を重視する理由として、電力市場では需要家の影響力が大きい点を指摘した。「電力市場にはOPEC(石油輸出国機構)はない」とし、「最も優れたソリューションを提供した企業が勝者になる」という。欧米の石油メジャーはかつて市場の支配権を持っていたが、OPECに主導権を奪われた経緯がある。

 

 同社は今後力を入れる再生エネ投資の7割は北米や欧州で太陽光や風力などに振り向ける方針。すでに18年には米国で太陽光発電大手のシリコンランチの株式約44%を約2億㌦を投じて取得している。また17年にはEV(電気自動車)向けの充電ステーションを手掛けるオランダのニューモーションを買収した。

 

 ただ、日本の再生エネ市場については、現在のところ、ほぼ手つかずの状態にある。しかし、ヴェツェラー氏は「洋上風力など重要な市場で、シェルも役割を果たしたい」と将来の参入に意欲をみせた。

 

 電力向けでは石炭と比べてCO2排出量を抑えられるLNGの供給にも力を入れる。一方、CO2の多い原油等の資源権益については見直しを進めている。たとえば、17年にはCO2の排出量が多い原油「オイルサンド」の権益を約72億㌦で売却した。

 

 ヴェツェラー氏は「全ての出資案件でCO2価格1㌧当たり40㌦の『カーボンプライシング』を想定して経済性を検証している」とした。カーボンプライシングはCO2の排出量に応じて課税する炭素税や排出量取引などの形で、EUや中国、米国の一部などがすでに導入している。低炭素化の基準・尺度を軸にして、長年のエネルギー事業そのものを大きく変えていく考えだ、としている。

https://www.shell.com/

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181129&ng=DGKKZO38310390Y8A121C1TJ3000