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脱炭素を求める企業グループの「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」。政府の長期成長戦略へ「2050年排出ゼロ」目標の設定と、カーボンプライシング導入を提言(RIEF)

2018-12-01 23:34:08

JCLP3キャプチャ

 

  脱炭素を目指す企業のネットワークである「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan-CLP:JCLP)」は、2050年の国内の温室効果ガス(GHG)排出量ゼロを目標とし、カーボンプライシング政策の導入を求める長期成長戦略を提言した。同時に実施した市民アンケートで、9割以上の人が「排出ゼロ」目標を支持していると指摘している。

 

 JCLPは、持続可能な脱炭素社会の実現には産業界自身が健全な危機感を持って、積極的な行動すべきとの趣旨で、リコー、イオン、オリックスなどの企業が立ち上げた「企業NGO」。現在、17社が正式メンバーとなっている。https://japan-clp.jp/index.php/japanclp

 

 今回、脱炭素提言をまとめたのは、日本政府がパリ協定に基づき進めている長期成長戦略への盛り込みを求める形で提言をまとめた。

 

2050年GHG排出量ゼロ目標への市民の賛成度
2050年GHG排出量ゼロ目標への市民の賛成度

 

 JCLPは提言に際して、「気候変動の深刻な被害を避け、気温上昇に歯止めをかけるためには世界の温室効果ガスの累積排出量に上限を設ける必要性がある」との認識を示している。そのうえで、日本の長期成長戦略は、日本の各階層に脱炭素社会の方向性を示し、個別の気候変動政策やエネルギー政策へも大きく影響する重要なテーマ、と位置付けた。

 

 提言は、①国民全体で気候変動への危機感を共有する②「脱炭素ビジネス立国」をビジョンとして掲げる③「2050年に日本国内のGHG排出ゼロ(排出と吸収を踏まえた正味ゼロ)」を明記④そのために日本の脱炭素関連市場の拡大と、その必要な基盤としてカーボンプライシング・公共投資による脱炭素インフラの整備⑤脱炭素化への「転換マネジメント」の仕組みを構築するーーの5項目。

 

 「2050年排出ゼロ」の目標について、「全てのアクターが同じ方向性を共有するために、危機を避けるために必要な削減の規模や時間軸を明示するゴール」と位置付けている。目標実現のためには、少なくとも電力の完全な脱炭素化が必要と指摘。早期に電源の大部分を再エネ化することを求めている。

 

カーボンプライシングへの市民の反応度
「排出ゼロ」を支持する市民の性別・年齢別分布率

 

 また2030 年のGHG 削減中期目標として、現在の 2005年比25.4%の政府目標の引き上げを求めている。提言では、中期目標の変更案は明記していないが、JCLPが2015年に示した「2005年比36%削減」を示している。

 

 さらに提言は、大幅なGHG削減を実現するためには、脱炭素製品やサービスを求めるマーケットが拡大することが必要、と強調。そのための重要なツールとして、カーボンプライシングの導入と、公共投資による脱炭素インフラの整備を提起している。

 

 前者のカーボンプライシング導入により、企業は脱炭素商品・サービスに経営資源を投入し易くなる。その結果、イノベーション、スケールメリットにより価格低下が進み、マーケット規模が拡大する。すると、さらにイノベーションを呼び起こす、という好循環が生まれる。そうした循環のきっかけがカーボンプライシングというわけだ。

 

 後者の公共投資による脱炭素インフラの整備は、再エネの有効活用に必要な基幹送電網や、EV の利用を促進するための蓄電設備等を想定している。脱炭素製品・サービスが多くの国民に利用されるためにはこうした「脱炭素」のためのインフラの整備が必要、としている。

 

 同時に公表したアンケートは、全国の18~69歳の男女1000人を対象としたオンライン調査。2018年11月12日~11月14日の間に実施した。

https://japan-clp.jp/images/pdf/JCLP_LTS_20181130.pdf

https://japan-clp.jp/images/pdf/Detail_questionnaire_result_181128.pdf