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欧州委員会・サステナブルファイナンス行動計画の技術専門家グループ(TEG)、サステナブルファイナンスのタクソノミー(事業分類)案を公開。2月中旬まで意見聴取期間設定(RIEF)

2018-12-11 07:49:37

EU1キャプチャ

 

   欧州委員会のサステナブルファイナンスに関する技術専門家グループ(TEG)は、気候変動回避活動のためのプロジェクトと、気候適応活動へのアプローチを分類したTaxonomy案をまとめ、オープンコンサルテーションを開始した。

 

 公開されたTaxonomyのドラフト案は、EUが目指すサステナブルファイナンス行動計画に盛り込まれる予定のEUグリーンボンド基準やサステナブルファンドのラベル化などの多くの目標のベースとして活用される。このため、市場から注目をもって迎えられた。http://rief-jp.org/ct4/85096?ctid=71

 

 欧州委員会はこれらの案の多くを、財務報告書の開示項目として活用できるようにする考えだ。ただ、産業界や資産運用業界等の一部には懸念の声もある。コンサル期間は来年2月22日まで。オンラインで広くフィードバックを募るほか、ワークショップ等も開催する予定だ。

 

 Taxonomyは、気候変動対応の各種グリーンプロジェクトやサステナブルプロジェクトを、投資家が分かり易いように共通の言語で分類化することを指す。各プロジェクトの「グリーン性」を明確に仕分けし、グリーンウォッシュへの懸念を削減するとともに、一定の分類基準を示すことで、各グリーンプロジェクトの調達コストの引き下げにつながる期待もある。

 

TEG1キャプチャ

 

 TEGの35人のメンバーは今年夏に召集された。半年弱の短期間で108ページから成るドラフト案をまとめた。内容は気候変動の回避(Mitigation)事業、適応(Adaptation)事業を中心に、すべてのサステナブル活動をリスト化することを目指している。

 

 今回、コンサルテーションの対象として公開したのは、このうち、気候変動関連の回避と適応事業に絞っている。その他のサステナブル事業のリスト化は、今後新たな専門家を募って開発していく予定だ。

 

 気候変動の回避事業では、「第1ラウンド活動」と「第2ラウンド活動」とに2分している。第1ラウンドには、太陽光や風力発電事業などの再生可能エネルギー事業のほか、農業分野では農業セクター、森林と漁業、植林、再生林、森林管理などが対象となる。輸送セクターでは、低炭素陸上輸送(EVなどの自動車等)が含まれる。

 

 一方、第2ラウンド扱いとなるのは、非再生可能エネルギー事業のほか、農業部門の畜産など、輸送では海運、航空分野が該当する。第2ラウンドの作業は年明け早々に開始するという。

 

 また再エネ設備の製造業や、低炭素輸送関連事業などの、CO2の排出量が多くない製造活動も、第1ラウンドに含めた。一方、その他のアルミニウム、鉄鋼、セメント、化学などのCO2高排出産業・企業は第2ラウンドに含まれる。これらの産業では、高排出量の状況と、低炭素経済への移行のための設備等の原材料を提供する役割との重要性を推し計ることになる。

 

 鉱業開発については第2ラウンド扱いとなる。ただ、泥炭層の開発や採石、石炭やリグナイト、原油の開発等は第2ラウンドの対象からも除外される。

 

 Taxonomyはグリーン事業を分類するだけではなく、詳細な適格性のクライテリアも同時に示す。例えば地熱事業の場合、GHG排出量を実質的に回避できることを証明し、kW時当たりCO2排出量を125gにとどめるという基準を提案している。

 

 適応事業については、「現在および将来の気候変動から生じるネガティブな効果の削減に実効的に貢献するような事業」と定義している。ただ、実際の適応事業の評価は、対策の文脈ごと、さらには地域特性で評価することになる。

 

 TEGのTaxonomy担当を務める国連支援の責任投資原則(PRI)代表責任投資役員(CRO)のネーサン・ファビアン(Nathan Fabian)氏は「どの経済活動がサステナブルかどうかを明確化してほしいというグローバルなニーズがある。Taxonomyはそうした要請に応えて、投資家がサステナブル投資の機会を把握し易くするもので、投資家と金融商品発行体にとって取引コスト低減のメリットがある」と指摘している。

 

 ただ、Taxonomy自体は仮に制度化されたとしても、それ自体で投資機会を生み出すものではない。Taxonomyをベースにして、企業や各国政府が事業投資を増やすビジネス機会を見出す必要があるし、資本にとって魅力となるグリーン資産への適正なプライシングを付けることで初めて、事業に資金が流れるようになる。欧州委員会はそのための一歩を踏み出したことになる。

 

https://ec.europa.eu/info/publications/sustainable-finance-technical-expert-group_da