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温暖化の進展による北極圏の永久凍土融解で、同地域インフラの最大70%が損傷するリスク増大。ヤマル石油・ガス田などでも事故リスク高まる。北欧の研究者らが共同論文で指摘(RIEF)

2018-12-12 23:38:48

toudo3キャプチャ

 

  温暖化の進展で、北極圏の永久凍土の融解が進行し、CO2より温暖化係数の高いメタン等の排出増加が懸念されるが、同時に、凍土融解で地表が陥没するなどの影響で、北極圏域に点在するインフラ設備の最大70%が崩壊等のリスクにさらされるとの研究結果が12日、公表された。リスクに直面するのは、現在、ロシアが積極的に開発を進めるヤマル石油・ガス田とつながる鉄道なども含まれる。大規模インフラ事故の潜在リスクが高まっている。

 

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された「Degradation permafrost put Arctic Infrastructure at risk by mid-century」と題する研究論文の分析による。論文は、フィンランド・オウル大学(University of Oulu)のヤン・ヨルト(Japn Hjort)教授のほか、ノルウェー、米国等の地質学、地球科学などの専門家チームが共同執筆した。

 

 研究チームは、永久凍土融解の影響予測のため、北半球の永久凍土地帯全域に設置されている住宅や、道路、鉄道、パイプライン等のインフラに関する詳細なデータを利用し、詳細なモデルを作成した。

 

北極圏域で永久凍土の融解し易い地点
北極圏域で永久凍土の融解し易い地点

 

 それによると、永久凍土が温暖化の進展で融解することによって、表面土の軟弱化や陥没などが発生するリスクが高まる。現在、北極圏域に設置されている住宅や道路、鉄道等のインフラ施設等は、永久凍土の融解リスクを受けやすい地域に集中する形になっており、事故リスクの直接被害は増大する。

 

 モデル分析によると、2050年までに現行のインフラ施設の約70%(48–87% :中位値 69%)、居住民は現在の同地域の人口の4分の3に相当する約360万人が影響を受けるという。

 

 もっとも影響が高い地域には、人口約100万人、インフラは全体の3分の1が集中しており、建物の件数にして3万6000棟以上、道路延長距離は1万3000km、空港100カ所が打撃を受ける可能性がある。また、ロシアの石油・ガス田の生産拠点の45%が同地域に属し、地表不安定の影響で、設備損傷のリスクが高いと指摘している。

 

北極圏域のハザードマップ
北極圏域のハザードマップ

 

 それ以外で影響が大きいインフラ設備としては、ロシア内陸部の鉄道ルートがあげられる。中国の青海―チベットを結ぶ鉄道(470km)のほか、世界で最も極北に位置するObskaya−Bovanenkovo鉄道(280km)もリスクが高い。同鉄道はロシアが開発を促進しているヤマル半島の石油・ガス田と連結しており、これらの油田・ガス設備も影響を受ける可能性がある。

 

 パイプラインも損傷、漏洩リスクが高まる。東シベリアと太平洋をつなぐ石油パイプライン(590 km)、ヤマルのYamal-Nenets間のガスパイプライン(1260km)、アラスカのTrans-Alaska Pipeline System (550km、TAPS)などが大きな影響を受けると予測されるインフラだ。

 

 永久凍土融解リスクの影響は、パリ協定で各国政府が約束した目標(NDCs)を達成できたとしても、十分には軽減できないという。ただ、協定が目標とする産業革命前からの世界の気温上昇を1.5℃~2.0℃未満に抑制できれば、2050年以降に発生し得る潜在的な荒廃状態を軽減できる可能性はあるとしている。

https://www.nature.com/articles/s41467-018-07557-4