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2018年の米国の原油生産量、45年ぶりに世界第一位に。シェールオイル生産のコスト低減が貢献。ロシア、サウジを抜く。原油「純輸出」も視野に。米国の中東政策にも影響か(各紙)

2019-01-15 01:18:42

Shaleoilキャプチャ

 

 各紙の報道によると、2018年の米国の原油生産量が45年ぶりに世界最大になった模様だ。シェールオイルの生産が10年で2倍強に拡大し、原油輸入依存度は30年ぶりの低水準に下がっている。中東原油の重みの低下で、伝統的な中東関与政策がさらに転換し、トランプ政権が掲げる「米国第一」の外交・安保政策に拍車がかかるとみられる。

 

 日本経済新聞等が報道した。前年17年の原油生産最大国はロシアで、2位がサウジアラビア。米国は3位だった。原油生産増大により、米国は輸入より輸出が多い純輸出への転換も視野に入ってきた。

 

 米エネルギー情報局(EIA)等の推計によると、18年の米原油生産は日量平均1090万バレル前後と前年比約2割伸びたとみられる。昨年9月までにサウジアラビアとロシアを抜いて1位になった模様だ。シェールオイルは技術革新によるコスト低減で、現在は1バレル50㌦以下でも採算がとれるという。

 

 原油生産増で、輸入から輸出を差し引いた純輸入が国内消費に占める割合は18年に30%を下回った公算が大きいとみられる。これは1988年以来の低水準だ。需要拡大が続いた90年代半ば以降は、ほぼ4~5割で推移していた。輸入のうち、石油輸出国機構(OPEC)諸国からの輸入は直近ピーク(08年)の約5割となっている。これは31年ぶりの低水準。

 

 

 一方、米国の原油輸出は、以前は石油危機の経験で禁止していたが、2015年に解禁後は急速に増えている。18年11月最終週にはサウジやロシアなどに次ぐ世界4位の規模にまで増えている。

 

 米国の原油と石油製品を合わせた輸出は昨年11月に週間で一時的に輸入を上回り、同じ基準で遡れる1991年以降初めて純輸出になった。シェールオイルの生産は掘削資金の調達環境などで振れる面もあるが、著名アナリストのダニエル・ヤーギン氏は「20年代初頭には年間でも純輸出国に転じる」と予測しているという。

 

 足元の原油相場は、1バレル50㌦前後で推移しており、シェールガスの生産コストが上値を抑える展開が続いている。原油価格の上昇が抑えられることで、OPECが減産で価格を上げようとしても効果が減じられる。そうなると、原油収入に財政を頼っているロシアや中東の経済・政治も影響を及ぼす可能性があるとの見方も出ている。

 

 米国の原油の輸出入収支は17年が1100億㌦(約11兆円)のマイナスで、モノ全体の赤字の14%を占めていた。原油輸出の拡大で貿易赤字全体が減る効果も期待できる。米国は天然ガスでは、すでに17年に純輸出国に転じている。原油の輸出が増えることで、「エネルギー大国」としての米国の存在感が増しそうだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39982610T10C19A1MM8000/