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三菱日立パワーシステムズの安藤社長、石炭火力事業の先行きに懸念。「逆風」を認識。「石炭火力が小さくなるのは明らか」と認める(各紙)

2019-02-05 14:44:37

日本経済新聞のインタビューに応じる安藤健司社長

 

  石炭火力発電事業計画が相次いで見直されているが、ガスタービンなど火力発電機器の国内最大手、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の安藤健司社長(三菱重工業副社長)は各紙のインタビューで「石炭火力への逆風の認識を新たにしている。今後、石炭火力が小さくなるのは明らか」と、発電事業での石炭離れが加速することを認めた。再生可能エネルギー発電については、「顧客から再エネ発電を建てて欲しいといわれれば、イエスと答える」と述べた。

 

 MHPSは2014年2月に、三菱重工と日立製作所の火力発電事業を統合して設立した。火力発電分野では、米GE、独シーメンスと並ぶ、世界トップ3を構成している。両社の事業統合は東京電力福島第一原発事故により、電力各社の経営悪化へ対応するとともに、大型ガスタービン製造に強い三菱重工と、中小型ガスタービンに強い日立を統合することでグローバル競争に対応する狙いで設立された。

 

 安藤社長は日本経済新聞とのインタビューで、現在の火力発電事業環境について、「構造的な逆風」が吹いていることを強調した。「2018年末から19年にかけて、石炭火力発電の計画の中止や、石炭火力から液化天然ガス(LNG)発電への計画変更などの動きが相次いだ。予想以上のスピードで(風力や太陽光などの)再生可能エネルギーが伸びていることに加え、石炭火力への逆風の認識を新たにしている」

 

 

 こうした認識に立ったうえで、「石炭火力が(発電事業全体の中で)小さくなるのは明らか。2019年3月期から3カ年の事業計画では、固定費の10%削減を指示した。1年目は予定通りの削減ができたが、もう少し固定費削減の手を強めなければならない。楽観視はできない」と危機感を示した。

 

 

 本業のガスタービン事業の見通しについては、「米国ではシェールガスが非常に安いため、大手電力会社は再生エネと並行して、老朽化した石炭火力に代えて大容量のガスタービン複合発電所を建設する動きが起きている。全世界で年間5000万kW程度の新規建設需要が2050年ごろまで続く。発電効率67%を達成する時期を早めるなどして、攻めの姿勢を強める」と強気の姿勢を示した。 

 

 ただ、石炭火力事業を中心に、固定の増加が是正されないと、利益率は伸びない。営業利益率の向上の見通しについては、「今は難しい。大幅に落ち込むことはないが、顧客も含めて我々を取り巻く事業環境は厳しい。利益志向で物事を考えるよりも、注文通り製品を納め、当初の性能や信頼性を達成して積み重ねることが大事だ」と慎重に語っている。

 

 事業縮小が続く石炭火力等の火力発電事業から、再エネ等の新規需要が高まる分野への人の移動や、工場再編などが求められる。こうした企業全体の構造改革については、「ある部分では必要だ。事業計画を立てたのは昨年5月。その後、GEなど同業他社の状況が分かり、ここにきて一段と厳しくなっている。我々もさらに保守的に考え、初期計画にとらわれず先手を打つことが必要だ」。

 

 「従業員を大切にすることは三菱重工の原点であり、簡単に解雇することはできない。MHPSには優秀なEPC(設計・調達・建設)組織がある。石炭火力のEPC部隊を新たな分野で活用することを模索する」などと語った。

 

 新規に注目される太陽光や風力などの再エネ事業については、「(顧客から)MHPSに再生エネ発電所を建ててほしい、と言われれば『イエス』と答える。風車や太陽光パネルの製造はしないが、調達して発電所として納めることはする。EPCの技術者は新しい分野にも比較的順応しやすい。素地は整っている」と前向きな姿勢を示した。

 欧米を中心に機関投資家の間では、温暖化を進める石炭火力などへの投資を引き揚げる(ダイベストメント)が広がっていることについては、「石炭ガス化複合発電など、将来的にどう石炭を有効活用するかについてはネガティブではない。インドネシアなど石炭を今後も作り続ける国への投資は今後も引き続きある。そういう顧客や投資家に我々の能力を正確に示すことが大事だ」と指摘。引き続き化石燃料分野の技術開発を進める考えを示した。

 

 また同社はトルコで原発計画にもかかわっている。先に、連携先の日立製作所が英国の原発計画を凍結したことへの反応として、「今は、当社が実施したシノプ原発計画の事業化調査の結果をトルコ政府に提出し、その回答を待っているところだ。ボールは先方にある」と述べた。東電など沸騰水型軽水炉(BWR)を手掛ける4社が、事業基盤強化のため提携を模索している動きについては、「(三菱重工が製造する)加圧水型軽水炉(PWR)とは技術的に違う。(提携による)シナジーが出るかというと、そうはならない」と否定的な考えを示した。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO40869770U9A200C1XA0000?type=my#AAAUAgAAMA