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国内最大の火力発電事業会社「JERA」、経営ビジョンに再エネ発電重視を掲げる。石炭火力より、再エネ・LNGの組み合わせを柱に、グローバル・リーダー目指す(RIEF)

2019-02-06 12:55:36

JERA2キャプチャ

 

 東京電力と中部電力が国内の火力発電事業を統合して共同で設立したJERA(東京・中央)が、4月からの完全統合に向けて経営体制を一新した。新社長に就任する小野田聡氏(中部電力副社長)は、「洋上風力など再生可能エネルギーを育てる」と語り、2025年に向けたビジョンに「LNGと再エネにおけるグローバルリーダー」を掲げた。主力の石炭火力事業は老朽施設が多く、石炭火力にこだわらず、再エネ重視の姿勢を明瞭に示した。

 

 石炭火力中心の事業計画の見直しは、先に、火力発電機器最大手の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の安藤健司社長が、「今後、(発電機器に占める)石炭火力が小さくなるのは明らか」と語っている。国内最大の火力発電事業保有者となるJERA自体が、老朽化が進む既存の火力発電事業のリプレースよりも、再エネ発電事業を重視する姿勢を明らかにしたのは、ようやくわが国の産業界もエネルギー転換への認識が浸透してきたといえる。http://rief-jp.org/ct4/86803

 

JERAの新社長になる小野田聡氏
JERAの新社長になる小野田聡氏

 

 JERAは、東電と中部電力の既存火力発電事業を4月1日付でJERAに移管し、同日から本格稼動する。発電容量で国内火力の半分を占め、LNG調達量では世界最大規模の巨大なエネルギー会社となる。保有する火力発電は国内26ヶ所、発電量6700万kWとなる。統合5年以内に、年間1000億円以上のシンジー効果を生み出すとしている。

 

 ただ、エネルギー産業の環境はグローバルに激変している。アジアでのエネルギー需要の拡大と、脱石炭・ガスシフトが同時並行的に起きているほか、再エネ分野の技術革新がデジタル化の進展とともに加速度化している。ドイツでも石炭火力全廃を決めるなど、石炭への「逆風」は強い。また電力事業そのものも、日本以外でも規制緩和が進み市場競争が激化している。

 

 こうした流れの中で、新体制に移行するJERAは、「Mission」として「世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供」とし、2025年に向けたVisionとしては「クリーン・エネルギー経済へと導くLNGと再エネにおけるグローバルリーダー」を掲げた。再エネの変動をLNG火力で吸収する組み合わせを想定、開発する再エネも太陽光だけに偏らない開発、として洋上風力を想定している。

 

JERA5キャプチャ

 

 新社長に就任する小野田氏は「(両方の親会社から)自立した、グローバルなエネルギー企業を目指す」と決意を示した。主力事業の大層を占める石炭火力発電事業では、CO2削減の観点からグローバルに逆風が吹いている。この点について小野田氏は「経済性を考えると石炭は必要だが、環境面にも配慮する必要がある」と述べ、「洋上風力など再生可能エネルギーを育てる」と語った。

 

 

 再エネ開発については、「(両親会社と)一緒に事業展開するなど、競合でなく協調でやっていきたい」と述べた。

 

オーストラリアで開発中のLNGプロジェクト
オーストラリアで開発中のLNGプロジェクト

 

 JERAはグローバル市場での競争力強化も目指している。しかし、国内でこれまで石炭火力・原発中心の産業構造を守る姿勢を官民で続けてきた結果、グローバルな再エネ市場では、欧州系のBPやロイヤルダッチシェルなどのエネルギー企業の先行を許す形となっている。すでにJERAは今年初めに、丸紅が英国で持つ洋上風力発電事業の権益の24.95%の譲渡を受けるなど、海外戦略への手を打ち始めた。

 

 4月にJERAの会長に就任する佐野敏弘氏(東電フュエル&パワー会長)は、「JERAを海外でしっかり戦える企業にしたい」と語っている。

http://www.jera.co.jp/information/img/20190204_j1.pdf

http://www.jera.co.jp/

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190205&ng=DGKKZO40893440U9A200C1TJ3000