HOME8.温暖化・気候変動 |2018年のグローバルなエネルギー需要、過去10年で最も高い2.3%増の伸び率。CO2排出量も過去最大の331億㌧。景気要因と暖冷房需要の両要因が最大の影響。IEA報告(RIEF) |

2018年のグローバルなエネルギー需要、過去10年で最も高い2.3%増の伸び率。CO2排出量も過去最大の331億㌧。景気要因と暖冷房需要の両要因が最大の影響。IEA報告(RIEF)

2019-03-28 00:29:10

 国際エネルギー機関(IEA)は、2018年の世界のエネルギー需要が過去10年でもっとも高い2.3%増の伸び率を示し、その結果、温室効果ガスの大半を占めるCO2の排出量も前年比1.7%増の331億㌧(33.1G㌧)と過去最も多かった、と公表した。排出量の3分の1は石炭火力発電からで、その多くは、中国、インド、日本などアジア諸国の排出量が過半を占めた。

 エネルギー需要の増大は、グローバル経済が好調に推移したという経済要因と、18年は年間を通じて寒暖の差が激しく、一定の地域で暖冷房需要が増大した自然要因の両方が影響したとみられる。電力需要増大を補完する形で、天然ガスが燃料源の選択肢となっており、エネルギー消費増加分の45%を占めた。天然ガス需要は特に米国と中国で顕著だった。

 すべての燃料需要が増大した。このうち化石燃料需要は2年連続で増加分の70%近くを占めた。依然、化石燃料依存のエネルギー構造が変わっていないことを示している。

 ただ、再エネ電力も二ケタペースで伸びた。特に太陽光発電は前年比31%増と急増した。しかし、高いエネルギー需要増に対応するにはまだ不十分で、石炭火力の使用も増加している。

 その結果、グローバルなCO2排出量も過去最高の33.1G㌧を記録した。石炭火力からだけで10G㌧のCO2排出量を占めた。しかもその大半がアジア諸国からで、今や世界全体の稼働中の石炭火力の半分以上がアジアに集中しているという。もちろん日本も含んでいる。

 

IEAキャプチャ

 

 アジアの石炭火力発電の特徴は、建設から平均12年と若い点だ。石炭火力は操業開始後平均50年は稼動することから、膨大なアジアでの石炭火力発電設備は、CO2削減のネックになる可能性もある。そこで、これらをどうクリーン化、再エネ転換するかがグローバル課題となりそうだ。

 

 エネルギー別では電力需要が前年比4%増の2300TW以上とエネルギー需要全体よりも7割以上高い伸び率を示した。電力が最終エネルギー消費全体に占める割合は20%にまで拡大している。電力需要の増大は、第一次エネルギー需要伸び率のほぼ半分を占めている。

 

 そのうち、再エネ発電は電力需要増のほぼ半分を占める形となった。中国は石炭火力発電と同様に再エネ発電の太陽光と風力の両方でも、グローバルリーダーの座に就いている。続いて、欧州、米国が続く。

 

 エネルギー原単位は1.3%改善した。ただ、改善率としては2014~16年の平均比率の半分にとどまった。3年連続での改善率のスローダウンだった。IEAはその原因について、エネルギー効率化を促進する政策が各国とも弱かったことと、好調な経済に支えられてエネルギー需要の成長が高かったことが、いずれも影響したと指摘している。

 

IEA4キャプチャ

 

 IEAの事務局長のFatih Birol氏は「2018年の世界全体のエネルギー需要は過去10年でもっとも成長率が高かった。同時にガスにとっては新たな『ゴールデン・イヤー』だった。ただ、再エネ発電の大きな伸びにもかかわらず、世界の温室効果ガスの排出量は引き続き増大している。したがって、すべての分野でのさらなる緊急行動を展開する必要性が高まっている」と警告を鳴らしている。

 

 エネルギー需要のほぼ70%は、中国、米国、インドの3か国合計で占められる。このうち米国は、石油・ガス需要がもっとも高い伸び率を示した。特にガス消費の伸びは前年より10%増と急増し、IEAが1971年に始まって以来の急増となった。

 

 グローバルなガス需要は2010年以来の増加率を示し、年間4.6%増となった。2年連続の大幅な伸びで、高いエネルギー需要と石炭の代替化が要因となった。需要は米国のほか、中国ではさらに高く、前年比ほぼ18%増を記録した。

 

 石油需要は全体で1.3%増。国別では米国が20年ぶりでグローバルな石油需要の増加を牽引する形となった。石油化学事業の増大、産業生産の増大、輸送サービスの増大などがその要因だ。

 

 グローバルな石炭消費は0.7%増と鈍化してきた。伸びたのはアジアだけ。特に中国とインド、それに南アジア、南東アジアのいくつかの国で伸びた。

 

 原子力発電の伸び率も意外に高かった。18年を通じて、3.3%増とエネルギー全体の伸び率を上回った。その結果、日本の福島原発事故前の水準に戻った。主に、中国での新規建設原発の稼働と、日本での原発4基の再稼働が主な原発エネルギー増加の要因となった。世界全体では、原発は全体の電力需要の9%を供給する。

 

https://www.iea.org/newsroom/news/2019/march/global-energy-demand-rose-by-23-in-2018-its-fastest-pace-in-the-last-decade.htmlIEA4キャプチャ