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NTTグループ、電力事業に本格参入へ。地域での仮想発電所(VPP)事業に加え、直流技術で送配電事業にも参入。既存電力会社の送配電網とは別の選択肢となる期待も(RIEF)

2019-03-27 22:43:20

NTT3キャプチャ

 

   日本電信電話(NTT)は、再生可能エネルギー発電事業のほか、送配電業務などをNTTグループ全体で取り組む「スマートエネルギー事業」構想を打ち出した。これまでは既存の電力・ガス事業者と連携してきたが、2019年度上期に自前の「エネルギー事業推進会社」を設立、地域での仮想発電所(VPP)構築や、直流技術による送配電事業にも乗り出す。グループ全体でのエネルギー関連事業の売上規模を2025年度に6000億円に倍増させる。

 

 NTTグループの電力・エネルギー事業への本格参入は、全国を網羅する通信網と設備を抱えているだけに、既存の交流系統網とは別に、長距離伝送の容易な直流電力網を整備することができる。したがって、現在は送電網を独占している既存電力会社にとって、強力なライバルになる可能性もある。

 

 NTTは「既存の交流系統網を補完する新たな『スマートエネルギーソリューション』を提供する」と説明、既存電力網との補完関係を強調している。ただ、北海道や九州で再エネ電源が余剰化して、接続拒否問題が浮上している中、NTTが直流送電網を整備して、それらの電源を首都圏等に送電すれば、エネルギー全体の効率化が高まり、まさに「スマートエネルギー」となる。

 

NTTのスマートエネルギーソリューション推進体制
NTTのスマートエネルギーソリューション推進体制

 

 NTTは「スマートエネルギーソリューション」について、グループの情報通信技術、直流給電等の電源技術、蓄電池等の通信ビルリソース等、技術・ノウハウ・資産を最大限活用した直流エリアグリッドなどで構成し、エネルギー効率の向上、地球温暖化対策・再生エネルギー活用、耐災性(レジリエンス)向上などの新たな価値を提供する、と説明している。

 

 具体的には、発電、送配電/蓄電、小売/卸売の3つの領域において、5つの事業を展開する。1番目の発電領域では、再エネ発電を活用したグリーン電力発電事業を柱とする。軸となるのはむしろ、2番目の送配電/蓄電領域だ。同領域での事業は①VPP事業②高度EVステーション事業③バックアップ電源事業の3事業に分かれる。

 

 このうち、VPP事業は、太陽光、水力、風力等の分散電源を蓄電設備を含めてICTで地域間での最適な需給調節ソリューションを提供するもの。地域内の再エネ電源を既存電力網と独立させて活用できる。

 

 高度EVステーション事業はEV等の持つ蓄電・充電機能をビルや地域への送配電網への給電に活用する仕組みで、V2B(Vehicle to Building)、V2G(Vehicle to Grid)などと呼ばれる。これも既存の電力網を超えた電力の流れを目指すものといえる。

 

スマートエネルギーソリューションへの社会的要請
スマートエネルギーへの社会的要請

 

 バックアップ電源事業は、災害状況に応じた最適な非常用電力供給ソリューションの提供となる。この場合は、企業や地域の自家発電電源網を構築することになる。あるいはバックアップ電源網をネットワーク化する可能性もある。

 

  3番目の電力の小売/卸売の領域では、低環境負荷電力の提供を掲げている。石炭火力発電や原子力発電等を組み込んだ既存電力会社の「高環境負荷・高リスク電力」に対比する形だ。NTTはこれらの電力販売と自社の電話・ネット事業等とを総合化して販売することが可能となり、電力・ガス・通信総合サービス競争が加速しそうだ。

 

 NTTはこれまでエネルギー関連事業分野では、NTTファシリティーズ、エネット、NTTスマイルエナジーを中心に展開、基本は電力・ガス事業者と連携することで、年間3000億円規模の売上を確保している。今後、自らが主導的に再エネ発電や送配電事業に取り組むことで、グループ全体でのエネルギー関連事業の売上規模を2025年度に6000億円へと倍増させるとしている。

 

http://www.ntt.co.jp/news2019/1903/190327a.html