HOME13 原発 |経団連、「電力システム再構築」で提言。再エネ投資の大半は「持続可能ではない」とFIT制度改革を求め、原発再稼動促進と、発電稼動期間の80年延長の検討等を盛り込む(RIEF) |

経団連、「電力システム再構築」で提言。再エネ投資の大半は「持続可能ではない」とFIT制度改革を求め、原発再稼動促進と、発電稼動期間の80年延長の検討等を盛り込む(RIEF)

2019-04-09 14:35:20

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 経団連は8日、電力システムの再構築に向けた提言を発表した。その中で、再生可能エネルギー発電の重要性を指摘しつつも、「固定価格買取制度(FIT)による国民負担に支えられており、大部分は持続可能な電力投資とは評価できない」と批判。エネルギーのベストミックスを進めるため、原子力発電の再稼動を促進させるとともに、東京電力福島事故以降、停止している原発については、その停止期間を原発稼動期間から控除するほか、運転期間を最長80年に延長する検討等を求めている。

 

 報告書は、「日本を支える電力システムを再構築する~Societry 5.0実現に向けた電力政策~」のタイトル。問題意識として、日本の電力が抱える「4つの危機」を指摘した。①電源構成の80%が石炭等の化石燃料依存②再エネに適した地域が偏在、送電設備も不足③原発の再稼動の遅れが電力会社に大きな経営負担④電気料金の相対的な割高継続で、電力自由化政策が電力インフラへの投資抑制を招来ーーなどだ。

 

 現行の電力政策については、再エネ促進策とされるFIT制度を強く批判している。「発電電力量の全量を固定価格で買い取るのみならず、インバランス責任も負わせないなど、再エネ事業者は制度的にリスク排除の事業環境が保証されている。このため、資産運用感覚での投資が多い」「大部分は持続可能な電力投資と評価できない」等だ。

 

 送電網については、臨海部に立地する大型発電所を前提とした現行の送電システムを、遠隔地の大規模再エネ電源を都市の需要部に適地からの送電に適したものへと切り替える必要性をあげるとともに、電力需要の低下で投資の停滞が起きている、と危惧を示している。そこで、調整電源や送配電網の整備資金の調達手段として、財政投融資を活用したツーステップ・ローンの利用を求めた。国への支援要請だ。

 

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 2030年以降を見据えた電源構成として、再エネ、原子力、火力などの各種電源と、揚水、蓄電池、水素などの各種蓄エネルギー技術等を組み合わせたエネルギー・ベストミックスを「大方針」として堅守することが不可欠、としている。

 

 再エネについては、現行FIT制度は、極めて重い国民負担を生んでいる、として、同制度の抜本改正を求めている。引き続き制度的補助が必要な部分(地熱等)については、FITに代えて、欧州において採用が拡大しているFIP(Feed-in Premium:一定の基準に基づき補助(プレミアム)を与える制度)の採用を提案している。そのうえで、環境価値が市場で評価されることを前提とした買取価格を設定すべき、としている。

 

 原発については、政府に対して、安全性が確認された原発の再稼働に向けた取り組みを一層強化するとともに、原子力の長期的な必要性を明示し、リプレース・新増設を政策に位置づけるべき、と求めている。既存原発の再稼動促進を打ち出したうえで、再稼動までの停止期間の扱いについての配慮を求めている。

 

 たとえば、震災から現在までに経過した8年間は、原発の通常の運転期間40年の2割に相当し、運転期間を60年に延長しても、全体の1割超の期間は一切運転していないことになると指摘。これらの期間を技術的観点からの安全性を検討したうえで、「可能な範囲で40年ないし60年の運転期間から控除すべき」とした。また米国では運転期間を80年間まで延長する申請も出ているとして、わが国でも60年間よりもさらに延長することの検討を求めた。

 

 中西宏明会長は会見で、「日本は資源を持たない。このままでは電力の安定供給を保障できなくなる」と述べた。エネルギー政策の先行きが読みにくい現状を改め、「電力事業に投資できる環境をつくるべきだ」とも訴えた。さらに、温室効果ガスの削減に触れて、「本当に社会が受け入れるなら、原発の比率を高めるのが一番現実的だ」とも語った。

http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/031.html