米アマゾンの4500人以上の従業員が同社の最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏に対して、会社としての気候変動対策の明確化と、化石燃料依存を低下させるよう求める共同書簡を提出したことを明らかにした。書簡は公開されており、「(現在の)アマゾンのサステナビリティ目標は中身を欠いている」と批判している。
CEOへ公開書簡を送ったのは、同社の従業員で構成する「Amazon Employees for Climate Justice(AECJ)」のメンバー。4521人(4月11日時点)全員の署名が付されている。
書簡では、「アマゾンは気候リスクに対処するうえで何が必要で何か可能かを、世界中の人々にイメージを与え、理解させるうえでの資源とスケールを保有している」と、グローバル企業としてのリーダーシップの発揮を求め、ベゾス氏と取締役会を構成する役員に対して、会社としてのカーボン削減計画の概要を公表するよう求めている。
書簡の送付に先立って、アマゾン経営者と従業員グループとの間で2回にわたって会合が開かれたという。そこでの合意が至らなかったことから、アマゾンの顧客等に向けて共同書簡の公表に踏み切ったとみられる。
現在のアマゾン気候変動対策は、世界をネット化する物流システムでの温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「Shipment Zero」や、データセンター等で使用するエネルギーを再生可能エネルギー100%にする、との目標を掲げている。
しかし、AECJは、再エネ100%の達成年限を明示していない点を批判している。また、「Shipment Zero」は、現在の事業の成長を考えると、2030年に50%削減目標も達成不可能と指摘。「Shipment Zero」方針は、CO2排出量の多いディーゼル車などの使用を減らさず、森林オフセットなどからのクレジットで相殺する手法で、実際のCO2排出につながらず、森林クレジットを排出する地域の先住民等の権利を無視するリスク等があるとしている。
こうした現経営陣の「温暖化対策」の課題を指摘したうえで、「地球上でもっとも顧客本位の企業」を目指すための6つの原則に立脚した温暖化対策の立案を求めている。
AECJが求める原則は、まず、「科学と、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書とに整合する目標と実現年次の公表」を求めている。目標は、2050年のネットゼロ(2010年比)、2030年の50%削減としている。この目標はグローバルベースで、サプライチェーンも含む。
第2原則は、カーボンオフセットクレジットに依存するのではなく、化石燃料使用からの完全なる移行を求めている。第3原則は、経営決定をする際に気候への影響の評価を優先する。特に石油・ガスの掘削等のためにデザインされたような顧客向けのソリューションの提供は中止する。
第4原則は、人類による環境汚染や気候影響は、等しく及ぶのではなく、脆弱なコミュニティがもっとも影響を受ける。また先住民や「グローバル・サウス」と呼ばれる地域(アフリカ南部等を指す)等に集中する。したがって汚染対策や気候対応はこれらのコミュニティへの影響の削減を優先する。