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日本原電、国内初の廃炉専業会社の設立検討。「売電ゼロ」の経営環境打破へ。米エナジーソリューションズ社の出資の可能性も。「(廃炉促進の)大繁盛」を期待(各紙)

2019-04-17 10:50:27

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 各紙の報道によると、原発専業卸電力会社の日本原子力発電(東京)が、廃炉専業会社の設立を検討しているという。今年中に最終判断するとしているが、実現すると、国内に廃炉専門の会社ができるのは初めてになる。原電は米国の廃炉専業大手、エナジーソリューションズと提携関係にあり、同社からの出資も想定している。

 

 (写真は、日本原電が現在、廃炉作業中の東海発電所の1号機)

 

 東京新聞が伝えた。原電は東京電力福島第一原発事故以降、保有原発の東海第二発電所の1号機が停止状態になり、敦賀発電所の1号機が廃炉決定に、2号機は停止中。東海発電所の1号機廃炉処理中ということで、稼働原発ゼロの状態が続いている。

 

 その結果、原発専業にもかかわらず「売電収入ゼロ」という経営状態が続いている。今回の廃炉専業会社の設立計画は、原電が東海発電1号機の廃炉作業を続けている経験を生かして、東電など大手電力が進める廃炉作業に、同社のノウハウや技術を提供する「廃炉支援」サービスで、新たな収益を得る考えだ。

 

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 米国では廃炉ビジネスが普及しており、そうしたノウハウも導入し、廃炉作業の安全な手順や廃炉費用の低減を図る。新会社を軸に廃炉ノウハウを持つ人材を新たに育成し、原発メーカーや建設会社を巻き込んだ廃炉の支援態勢を整える、としている。

 

 東電福島原発事故以降、新規制基準に基づいて大手電力や原電保有の原発のうち、福島第一原発を除いて、7原発11基の廃炉が決まっている。また東電は福島第二原発の4基の廃炉方針も示している。福島第一原発は「事故原発」で、廃炉作業は容易ではなく長期の時間と膨大な費用を要するが、他の廃炉予定原発は一定の共通プロセスでの作業が可能だ。

 

 出力100万kW級の原発の場合、解体に際して1基当たり約50万㌧の廃棄物が発生、このうち約2%が放射性廃棄物という。廃炉作業には通常、30年の期間と約500億円の費用がかかるとされる。この間、作業員の被ばくや放射性物質の飛散を防ぐことが最大の課題になる。

 

廃炉作業のプロセス(経産省資料より)
廃炉作業のプロセス(経産省資料より) 

 

 安全性を確保しつつ、廃炉・解体の作業効率を上げて費用を抑えて、作業期間を短縮することが実現できると、収益増大を上げるとともに、早急に安全状態に回復させる期待がある。

 

 原電は2001年から、東海原発で商業炉初の廃炉作業を始め、今も作業を継続中だ。現在は熱交換器など放射線量の比較的低い設備の解体をしているという。また敦賀原発1号機の廃炉作業にも着手しているほか、福島第一原発の廃炉作業に社員を派遣するなど、廃炉作業のノウハウと実績を抱えている。

 

 このため、検討中の新会社に、社内で廃炉作業の経験のある社員を集めるほか、新たに人材育成もする考えだ。

 

 連携先と想定されている米エナジーソリューションズは2006年の設立で、これまでに米国内の原発5基の廃炉を手掛けてきた。2010年に始めたイリノイ州のザイオン原発の廃炉は間もなく完了する。すでに原電は、このザイオン原発に社員を送り込むなどして、放射性廃棄物の処理技術や廃炉の工程管理を習得している。

 

 原発事故後、国の審査に合格し、再稼働した商業用原発は全国で5原発9基。廃炉を決定・表明した原発を除く残る24基は、安全対策工事が長引いたり立地自治体の同意が得られないなどで、年内の再稼働を見通せる状況になっていない。

http://www.japc.co.jp/

https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201904/CK2019041702000142.html