HOME8.温暖化・気候変動 |アフリカのモザンピーク、再三のサイクロン被害で「気候債務の罠(CDT)」に陥るリスク。温暖化の原因は他国なのに被害だけ被る最貧国。IMFなどの緊急対策融資資金も重荷に(RIEF) |

アフリカのモザンピーク、再三のサイクロン被害で「気候債務の罠(CDT)」に陥るリスク。温暖化の原因は他国なのに被害だけ被る最貧国。IMFなどの緊急対策融資資金も重荷に(RIEF)

2019-05-03 08:56:59

mozann1キャプチャ

 

  再三、激しいサイクロンに襲われ、各地で甚大な被害を出しているアフリカ南部モザンビークが、「気候債務の罠(Climate Debt Trap)」に陥るリスクが指摘されている。CDTは、気候変動の要因には寄与していないのに、その影響の負担を強いられることを意味する。国際的な支援の在り方が問われている。

 

 (写真は、サイクロン被害で住宅が浸水、街が水没したモザンピークの村落)

 

 モザンピークは、3月に南部アフリカを襲ったサイクロン「イダイ」によって、周辺のザンビアなどを含めて1000人以上の死者と多数の行方不明者、被災者を出した。その後、4月後半には、新たに超強力なサイクロン「ケネス」が上陸した。豪雨と洪水で38人が死亡、3万5000棟以上の建物が全半壊、救助や支援物資の搬送も難航しているという。

 

 モザンピークは世界で6番目に所得が低い最貧国の一つに数えられている。ケネスによる被害住宅の再建対策のため国際通貨基金(IMF)から1億1800万㌦の緊急融資を受けた。IMFの融資は、被災を考慮して無利子の条件だが、融資元本は返済しなければならない。

 

 サイクロンや日本を襲う台風なども、気候変動の影響で年々、激化していることが指摘されている。温暖化の主因が人類のこれまでの経済活動の累積だとしても、モザンピークのような最貧国は、地球の温暖化を加速するような経済・産業活動は全くと言っていいほど、行ってきていない。だが、被害は他国よりも激しい。

 

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 英国のJubilee Debt Campaignのサラ・ジェーン・クリフトン氏は「モザンピークで起きていることは、他の国々でも今後、頻繁に起きるだろう。だが、最貧国に被災費用を融資しても、その債務返済の出口を見いだせないCDT問題を引き起こす」と指摘している。

 

 CDT問題に直面しているのは、モザンピークだけではない。同じくサイクロン被害を受けているザンビア、マラウィなども同様だ。これらの国々では死亡を免れても住宅は壊滅、コレラ等の健康被害も蔓延している。

 

 英オックスフォード大学のFriederike Otto博士は、「熱帯地域のサイクロンが気候変動の影響で甚大な強風と、膨大な降雨量を伴っているのは間違いない。さらに海面上昇なども洪水多発の要因になっている」と警告している。

 

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 パリ協定では、気候変動による損失や被害に、各国は協調して対応することで合意した。しかし、具体的にこれらの被害だけが集中する国への支援はほとんどされていない。

 

 Jubilee Debt Campaignなどは、サイクロン被害を受けた国々に対して、IMFなどの国際公的機関が提供した緊急融資については、元本の返済も見送る債務放棄を求めている。途上国が直面する社会的課題を支援するための融資を棒引きにする措置は、2015年にエボラ熱被害に見舞われた国々向けの対策費用を放棄した事例等がある。

 

 また、気候変動に主要な影響を及ぼしてきた化石燃料企業に「気候損害税」を課し、それらの資金を被害を受ける途上国等に提供する構想もある。

 

 クリフトン氏によると、IMFは中所得国等への投融資で十分な利益をあげており、昨年10月時点で300億㌦に達する内部留保を持っているという。公的機関としてのIMFの役割からすれば、余裕資金を国際的な繁栄の犠牲となっている最貧国支援に回すのは当然、との立場だ。

 

 モザンピークが悲惨なのはCDTだけではない。英国の銀行がモザンピーク政府に20億㌦の不正融資を行い、少なくとも7億㌦が行方不明になっていることも明るみに出ている。米調査機関の報告では、このうち2億㌦は仲介した銀行家や政治家への賄賂として使われたとしている。

 https://www.climatechangenews.com/2019/04/26/mozambique-faces-climate-debt-trap-cyclone-kenneth-follows-idai/