カナダ政府の「カナダ・サステナブルファイナンス専門家パネル:CEPSF(通称、カナダ版HLEG)」は、独自のタクソノミー(事業分類)を打ち出す方針だ。グリーン&サステナブルプロジェクトを整理するタクソノミーは、EU等が制度化作業中。カナダは化石燃料資源が豊富なだけに、国際標準化とは別に、化石燃料資源の移行を促す独自のタクソノミーを並行整備する「2トラック方式」をとるという。
「カナダ版HLEG」は、昨年春に財務省と環境・気候変動省の委託を受け、環境・気候変動問題に対処するサステナブルファイナンスに関する多様な課題の整理と、政策提言をするために、同国の金融界の4人の『賢人』によって組織されている。https://rief-jp.org/ct4/84116?ctid=71
同10月には、低炭素経済へ移行するうえでサステナブルファイナンス市場拡大のために、6つの基本的要素と、7つの軸になる金融市場・商品等の提案を盛り込んだ中間報告書を公表した。今回、それらを元に、5月か6月に公表予定の最終報告案の一部が明らかにされた。
提案される「カナダ版タクソノミー」案は、EUや国際標準化機構(ISO)などが、タクソノミーの国際基準化づくりを目指す動きとは、一線を画す。カナダはアルバータ州を中心に膨大なオイルサンド埋蔵量を持ち、石油・ガスの資源も豊富。これらの化石燃料資源は現在の同国経済を支える柱の一つであり、低炭素経済化への移行の重要なテーマだ。
そこで、カナダ版HLEGは、保有資源資産の経済価値を維持しながら、低炭素経済社会にスムーズに移行させる課題に対応する独自のタクソノミーを提案する構えという。グリーン&サステナビリティプロジェクトを分類するEUやISOの国際版タクソノミーとは別に、高排出企業や同プロジェクトを特定したタクソノミーを並行して示して、移行を促進するとしている。
このほどモノトリオールで開いたカンファレンスでCEPSFメンバーの一人、モントリオール大学長のTiff Macklem氏は「EUはタクソノミー開発でわれわれより先行し、国際基準化を目指している。だが、われわれにとって重要なことは、わが国の経済にふさわしいタクソノミーを探すことだ」と述べた。
同氏は、現英インフランド銀行総裁のマーク・カーニー氏が、カナダ中央銀行総裁の時代に、同行上級副総裁を務めた経験を持つ。同氏は、カナダ独自のタクソノミー選別は、EU等と対抗するものではなく、「2トラックはいずれ統合する」と述べた。
オイルサンド事業は石油等に比べ開発コストがかかることと、CO2排出量が大きいため、ESG評価を高める投資家からも投資魅力が減ってきているとされる。一方で、Macklem氏は「これらの産業は、低炭素事業化へ移行させることで、より高いカーボン・セービング(CO2削減可能性)を創り出せる分野でもある」と指摘している。
同氏は「われわれにとって重要なことは、これらの産業から資金を引き揚げる(Divestment)することではなく、これ等の産業の低炭素化移行を実現することだ」と述べた。
さらに、カナダと同様に資源が豊富な資源経済国に呼び掛け、高いCO2排出産業を対象とした事業・企業のタクソノミー開発で共同作業を目指すとしている。「EU型のタクソノミーとわれわれの資源型タクソノミーとは連携して推進されるべきだが、当面は、二つに別々に対応し、その後に統合化を目指すべきだ」(Macklem氏)と、している。