HOME10.電力・エネルギー |米国の4月の発電量、再エネ発電が石炭火力発電を歴史上、初めて上回る。5月も超過の見通し。再エネでは風力が水力を初超過。米国の電力市場の構造的変化、顕著に(RIEF) |

米国の4月の発電量、再エネ発電が石炭火力発電を歴史上、初めて上回る。5月も超過の見通し。再エネでは風力が水力を初超過。米国の電力市場の構造的変化、顕著に(RIEF)

2019-05-03 23:52:34

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 米国の4月の発電量に占める再生可能エネルギー発電量が石炭火力の発電量を歴史上、初めて上回った。トランプ政権は石炭事業復活を推進しているが、再エネ発電のコスト低下が顕著で、5月も同様に再エネ優位の発電市場になる見通し。石炭復活を期した政治的なエネルギー政策も、経済原則を無視することはできないことを物語る。

 米エネルギー情報機関(EIA)によると、4月の再エネ発電(水力、バイオマス、太陽光、風力、地熱の合計)は、2322GWh/day、さらに5月は2271GWh/dayの予測で、石炭火力発電の同1997GWh/day、 2239GWh/をいずれも上回る見通しだ。

 4、5月は春の電力需要が低下する期間、石炭火力発電は一時的にオフラインとする季節要因も影響しているとみられるが、年間でも、再エネ発電が石炭火力を上回る期間は、今年も、来年も、再三発生するとみられている。

米国での石炭発電㊤と再エネ発電㊦の推移
米国での石炭発電㊤と再エネ発電㊦の推移

 

 全米の発電量に占める石炭火力の割合は、2010年には45%と半分近くを占めていたが、2016年には天然ガスに追い抜かれ、2018年には28%と3割を切った。2020年には24%とさらに下がる見通し。
 トランプ大統領は政権就任以来、石炭産業復活に向けて規制の緩和等を続けているが、昨年の国内の石炭消費量は約4%減で、1979年以来、もっとも低いレベルとなっている。生産量も2%減となった。
 石炭火力発電は石炭消費の90%以上を占めているが、7GW以上の発電量を持つ既存石炭火力が老朽化で2020年までに閉鎖される予定。EIA の予測では、石炭生産量は2019年には前年比9%減の684MMst(百万㌧)、2020年は同6%減の649MMstと連続して減少する見通し。
トランプ政権の石炭復権策は空振りに
トランプ政権の石炭復権策は空振りに
一方、再エネ発電は2019年に全電力の18%を占め、2020年には20%へと比率を上げる見通しだ。太陽光、風力の両発電のコスト低下が引き続き堅調で、これまで米国の再エネ発電の主流だった水力発電量を、今年は風力が初めて超える見通しという。これも歴史的な転換点といえる。

 米エネルギー経済・金融分析研究所(IEEFA)の研究員、Dennis Wamstead氏は「5年前では決して起きないことが起きている。米国電力市場での発電主体の移行は自然現象といえる」と説明している。

 

 また、水力発電を風力発電が上回るということも、10年前には想像されなかった。しかし、投資資金が風力、太陽光に投入され、技術開発の進展を引き起こし続け、再エネコストをより安くしている。
 同時に、米企業や米国民が、よりクリーンなエネルギーを選好する動きも、電力市場の変化を後押ししている。石炭より、再エネ、水力より風力・太陽光、という流れだ。Wamstead氏は「再エネ発電は目下のところ、より良い選択肢となっている」と指摘する。