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オランダの首都アムステルダム、2030年からガソリン車とディーゼル車の市内乗り入れを禁止に。欧州の主要都市の「化石燃料自動車」規制強化、広がる(RIEF)

2019-05-04 21:52:09

Ams1キャプチャ

 オランダ首都アムステルダムの市議会は、2030年からガソリン車やディーゼル車など化石燃料で走る自動車の市内での走行をすべて禁じることを決めた。走行が認められるのは、燃料電池車や電気自動車のみになる。先行する形で来年から、車歴15年以上のディーゼル車の走行を禁じる。地球温暖化防止と、市民の健康維持を理由としている。

 (写真は、アムステルダムの市内の様子)

 2030年からのゼロエミッション車(ZEV)化への移行に向けて、段階的な規制を積み上げる。化石燃料を使用するバスや観光コーチの乗り入れも、2020年から禁じる。また運河や海洋のプレジャーボードや、原付バイク等も同様に段階的に禁じる。

 

 欧州では、主要都市の化石燃料自動車規制が広がっている。スペインのマドリードは昨年から、製造年が2000年以前のガソリン車や、2006年以前のディーゼル車の市内乗り入れ禁止措置を実施した。

 

アムステルダム市内の電気自動車の充電設備
アムステルダム市内の電気自動車の充電設備

 

 イタリアのローマも、2024年までにディーゼル車の市内乗り入れを禁じる方針だ。ベルギーの首都ブリュッセルも2030年以降、ディーゼル車の走行禁止を決めており、さらにガソリン車も禁止対象に加える方向という。

 

 これらの都市は、普段でも市内での道路渋滞が頻繁に起きるうえに、観光シーズンには大型観光バスが大挙して市内に集中、混雑と排ガス汚染が深刻な状況となっている。アムステルダムの市当局は「排ガス汚染は『静かな殺人者』だ。アムスの住民の平均生涯寿命を少なくとも1年は短くしている。市民にとっての最大の有害物質だ」と指摘している。

 

 市当局は、2030年規制の導入に向けて、市民が自動車の買い替える際に、ガソリン車等から燃料電池車、電気自動車への切り替えを誘導する方針だ。現状では新車の電気自動車等の価格は高いことから、中古の電気自動車等の市場が今後、数年間にわたって活発になるとみられている。

 

市民は自転車派が増加しているが・・
市民は自転車派が増加している。

 

 燃料電池車、電気自動車普及のためには、水素ステーションや充電ステーションの整備が必要になってく。現在、同市内には約3000の水素・充電ステーションがあるが、市当局は2025年までに1万6000~2万3000カ所に増やす必要があるとされる。

 

 同国の自動車関連産業は市当局の規制強化に対して批判的だ。自動車業界のロビー団体は「多くの消費者が電気自動車を購入する資金を確保できない。2030年までに市内の車の3分の1は電気自動車等になるだろう。だがそれ以外の多くの人は、電気自動車を手にできないだろう。そうした人々は市を去らねばならなくなってしまう」と批判している。

 

 こうした言い分は、まんざら、業界だからと、言い切れない面もある。フランスで昨年後半以来、続いている「黄色いジャケット」運動は、マクロン政権が打ち出した燃料税引上げへの抗議が発端だった。同政権はガソリン等の価格を引き上げ、自動車利用を電気自動車等へシフトさせる「経済的手法」を活用したとされる。

 

 しかし、割高の電気自動車を購入する余裕のない一般市民は、気候変動対策の「名目」よりも、負担の増大に対する反発が爆発、抗議活動は今も続いている。燃料電池車や電気自動車の価格が、ガソリン車等と同等にならない限り、買い替え時の選択は起きないし、ガソリン車より安くならない限り、買い替え需要自体が生まれてこないとみられる。自動車メーカーの技術革新力がカギを握る。

https://www.amsterdam.nl/en/policy/

https://www.theguardian.com/world/2019/may/03/amsterdam-ban-petrol-diesel-cars-bikes-2030