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環境NGOや環境学者ら、旅行大手の「エイチ・アイ・エス」が宮城・角田で進める輸入パーム油燃料のバイオマス発電所の建設中止を求め、澤田秀雄社長宛に抗議文書を送付(RIEF)

2019-05-08 13:42:09

HIS2キャプチャ

 

 旅行大手のエイチ・アイ・エス(H.I.S.)が、宮城県角田市で建設中のバイオマス発電所が東南アジアからのパーム油を燃料とすることに対して、環境団体や識者らが、計画中止を求める抗議文書を、同社の澤田秀雄社長らに送付した。同社では、使用するパーム油は持続可能な生産・利用を評価したRSPO(持続可能はパーム油円卓会議)認証を得ているとしているが、環境団体らは、発電需要の増大で熱帯林伐採圧力を高めている、と指摘、事業の中止を求めている。

 

 H.I.S.はグループ会社のH.I.S.SUPER電力が、宮城県角田市で、今年秋の試運転開始を目指して、バイオマス発電所を建設中。同発電所は、東南アジア等からパーム油を輸入して燃料とする計画で、輸入するパーム油については経済産業省が固定価格買取制度(FIT)の適用条件としたRSPO認定の燃料とするとしている。設備出力は41.1MWで、年間発電量は35万MWhの予定。

 

 これに対して、環境団体らは発電に際して年間7万㌧のパーム油を燃やす点を問題視。パーム油の原料となるアブラヤシの生産地マレーシア、インドネシアでは、広範囲にわたる熱帯林および泥炭地の破壊により、野生生物の生息地が失われ、大量のCO2が発生する。

 

 HIS11キャプチャ

 

 また、パーム油は主に加工食品等に使われる植物油で、これらを「発電用」として大量に燃やすことは、H.I.S.が主張するRSPO認証のパーム油を使うとしても、さらなる熱帯林破壊をもたらす懸念がある、と指摘している。実際、米国では、パーム油燃焼のバイオマス発電は、再生エネルギーとしては認めていない。また、これまで使用を認めてきたEUは、2030年までに使用を止める方針を打ち出している。

 

 抗議文書では、欧州委員会が公表した調査で、パーム油をバイオ燃料として使った際のCO2 排出量は CO2-eq/MJ当たり231gで、石炭火力発電の同97.3gを大きく上回っていると点も明記している。さらに、パーム油農園での強制労働による農園労働者の人権侵害、農園開発に伴う地域住民との土地紛争や、社会的な問題も数多く指摘されている、と強調している。

 

RSPOキャプチャ

   さらに、H.I.S.のグループ理念は「自然の摂理にのっとり、人類の創造的発展と世界平和に寄与する」とし、H.I.S. SUPER電力も、「自然の摂理にのっとり限りない人類と平和な未来へ繋がる社会を創造する」を経営理念としている点に言及。熱帯林の破壊に寄与するパーム油による発電所の建設は、この理念と相容れない、と指摘して、発電所建設の即時中止を求めている。

 

呼びかけ団体:

蒲生のまちづくりを考える会、仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会、市原憲法を活かす会、蒲生のまちづくりを考える会、市民ネットワーク千葉県、石炭火力を考える市原の会、石炭火力を考える東京湾の会、仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会、蘇我火力発電所計画を考える会、袖ケ浦市民が望む政策研究会、NPO法人ちば環境情報センター、横須賀火力発電所建設を考える会、国際環境NGO FoE Japan、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、プランテーション・ウォッチ、ウータン・森と生活を考える会、気候ネットワーク、WALHI(インドネシア環境フォーラム、FoEインドネシア)

呼びかけ人:明日香壽川(東北大学東北アジア研究センター教授(気候変動政策))、飯沼佐代子(地球・人間環境フォーラム)井上友昭(日本大学非常勤講師), 仙台パワーステーション操業差止訴訟原告)、井上真(早稲田大学教授(環境社会学), 日本環境会議副理事長)、小西由希子(蘇我火力発電所計画を考える会代表, 石炭火力を考える東京湾の会共同代表)、寺西俊一(一橋大学名誉教授(環境経済学), 日本環境会議理事長)、戸田清(長崎大学大学院教授)、泊みゆき(バイオマス産業社会ネットワーク理事長)、友澤悠季(⻑崎大学大学院准教授)、長谷川公一(東北大学大学院教授(環境社会学), 公益財団法人みやぎ環境とくらし・ネットワーク理事長, 仙台パワーステーション操業差止訴訟原告団団長)、広瀬俊雄(仙台錦町診療所・産業医学・健診センター産業医学センター長)、細川弘明(京都精華大学教授,高木仁三郎市民科学基金理事)、保母武彦(島根大学名誉教授(財政学),島根原発・エネルギー問題県民連絡会事務局長)、松浦真(宮城高等専門学校名誉教授, NPOきらきら発電・市民共同発電所理事)、松原弘直(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所理事・主席研究員)、水口剛(高崎経済大学教授(責任投資・非財務情報開示), 日本サステナブル投資フォーラム共同代表)、満田夏花(FoE Japan事務局長)、水戸部秀利(医師, NPOきらきら発電・市民共同発電所理事長)、山下英俊(一橋大学大学院准教授)、除本理史(大阪市立大学教授(環境経済学), 日本環境会議事務局次長)

https://www.his.co.jp/super-power/

http://www.foejapan.org/forest/palm/190507.html