HOME10.電力・エネルギー |英国、今月初めに「1週間の石炭火力電力無し」の記録(連続168時間)を達成。産業革命以来の歴史的「石炭離れ」明確に。2025年には石炭火力電力ゼロ達成へ(RIEF) |

英国、今月初めに「1週間の石炭火力電力無し」の記録(連続168時間)を達成。産業革命以来の歴史的「石炭離れ」明確に。2025年には石炭火力電力ゼロ達成へ(RIEF)

2019-05-10 22:36:26

UKcoal1キャプチャ

 

 英国は今月1日から1週間にわたって、石炭火力発電の電力を一切使わずに電力供給を賄ったことがわかった。1882年にロンドンで初めて石炭火力が導入されて以来、という歴史的な「石炭離れ」の実現だ。英国では2025年に石炭火力発電電力をゼロにする計画で、今回の「一週間」は、その一歩になった。

 

 1882年にロンドンで、世界で初めて発電を開始した石炭火力発電所は、93kWの発電容量のタービンを持っていた。設計は発明王のトーマス・エジソン。産業革命の象徴であり、化石燃料大量消費による温暖化開始の象徴でもあった。

 

 英国の電力系統運用会社ナショナル・グリッドESO(National Grid ESO)によると、5月1日の午後1時24分から、8日のほぼ同時刻までの一週間、全英の電力は石炭火力発電無しで賄われたという。時間にして連続168時間。これまでの最長は2018年4月の76時間10分だったが、一気に倍以上の記録更新となった。英政府は今年の「石炭無し発電」は1000時間に達するとみている。

 

 石炭火力の全発電量に占める比率は、1950年には97%と大半を占めていた。しかし次第に減少し、1991年に66%、99年に34%へと減少、2017年は7%と一ケタ台になっていた。

 

英国の石炭火力発電の比率の推移
英国の石炭火力発電の比率の推移

 

 今回の「石炭火力電力無し」の1週間、使用電力の23%は風力や太陽光などの再生可能エネルギー発電で、大層の45%はLNG火力発電がカバーした。残りは25%前後が原子力発電と、その他になっている。

 

 ただ、LNGは石炭火力より30%ほどCO2排出量が少ないが、同じ化石燃料でありCO2はゼロではない。そこで英政府は2030年までに風力発電で全体の3分の1を、太陽光発電で21%をカバーし、再エネ発電で過半を供給する体制に切り替える、としている。

 

 英政府は温暖化対策の柱の一つとして、石炭火力発電を2025年までに廃止にする方針を表明している。ナショナルグリッドESOの取締役会議長のフィンタン・スライ(Fintan Slye)氏は、「2025年までに、英国の電力システムはゼロカーボンでの運用が可能になるだろう。大規模な洋上風力発電と国内の太陽光発電を包含した新たな技術の統合と、需要サイドの連携を、スマート・デジタルシステムでリアルタイムの管理・コントロールをすることになる」と述べている。

 

 英ビジネス大臣のグレッグ・クラーク(Greg Clark)氏は「(今回の石炭火力無しの記録更新)は、英国が主要経済国で、ゼロエミッションに向けた法制化を最初に実施した方向性に沿った成果だ」と評価している。

https://www.nationalgrideso.com/