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化学工業会等による「海洋プラスチック対応協議会」、廃プラ処理で「発電燃料化」の有効性を示す報告書公表。「CO2排出削減効果劣らず」。欧州等のリサイクル重視論に対抗(RIEF)

2019-05-15 13:32:00

MR2キャプチャ

 

 日本化学工業協会などの化学関連団体や化学メーカーで組織する「海洋プラスチック問題対応協議会」は、廃棄プラスチック製品を燃料代替として利用するエネルギーリサイクルのCO2排出等の環境への影響が、他のリサイクル手段と同等であることがわかったと発表した。日本の廃プラ処理の半分を占める発電利用の有効性を定量的に評価し、廃プラの燃料化への理解を広げる方針という。

 

 (写真は、燃やして発電するか、リサイクル再生かが焦点の廃プラ処理)

 

 廃プラスチックの循環利用の方法としては、廃プラを元の化学原料にまで戻す「ケミカルリサイクル(CR)」、溶かして成形品として再生する「マテリアルリサイクル(MR)」、焼却して電力エネルギーを回収する「エネルギーリサイクル(ER:サーマルリサイクルともいう)」の手法がある。

 

 このうち、日本ではERが主流となっているが、焼却に伴うCO2排出量の問題が指摘されている。今回の協議会の検討結果は、製品の製造から廃棄までに発生するCO2を計測することなどで、各処理手法の環境影響評価を比べた。3手法とも容器包装材1kgを再資源化すると想定した。

 

 ER2キャプチャ

 

 有効利用する場合の手順として、廃プラが3手法で有効利用されて再生される製品による環境負荷低減の効果と、処理使用後の焼却・埋め立て等の処分による環境負荷等を計測。全体的な環境負荷削減効果をはじいた。3手法の比較とともに、廃プラを有効利用しない単純焼却の場合や埋め立て等の場合とも比較した。

 

 その結果、廃プラを燃料にして発電するERでは、RPF(固形燃料)利用とする場合のCO2排出量は2.89kg、発電焼却の場合では、発電効率が12.8%の場合も、25%の場合も、ともにCO2排出量は2.71kgだった。これに対して、MRの場合、再生製品としてパレットを製造し、CO2排出量は2.30kg、アンモニアを再生製造するCRの場合は、4.98kgだった。

 

ER1キャプチャ

 

 これらをそれぞれ廃プラを有効利用しない場合のCO2排出量と比較することで生じるCO2削減効果は、ERのRPF利用の場合は、2.97kgともっとも多く、次いでCRの2.11kg、MR(樹脂製パレット再生)の1.65kg、ERの発電焼却(発電効率25%)の1.43kgの順になっている。MRの木製パレット再生処理は0.63kgの削減効果は最も低く、ER(発電効率12.8%)も0.73kgと低かった。

 

 こうした検証を踏まえ、同協会は、「ERの発電効率25%の場合は、MRの平均的なCO2排出削減効果とほぼ同等のレベルであり、環境負荷削減効果が劣ることはない。RPF利用の場合は、むしろ環境負荷削減効果は高い部類に属する」と指摘している。

 

 欧州等では資源循環を重視し、「サーキュラーエコノミー」としてCRやMRの手法を推奨する一方で、発電用に焼却することで資源消費につながるERには批判的な傾向がある。これに対して日本は廃プラの5割以上をERで処理しており、批判にさらされている。今回の検証で、石炭代替にもなるRPFに再生して高い発電効率で利用することで、CO2削減を含む環境負荷削減効果を高めることができたとして、ERの有効性を強調している。

https://www.nikkakyo.org/news/page/7599