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情報通信技術(ICT)はエネルギー効率化より、エネルギー増大効果のほうが高い。デジタル化進展の先進国ではさらに顕著。仏シンクタンクが指摘(RIEF)

2019-05-27 08:00:49

ICT2キャプチャ

 

   情報通信技術(ICT)産業のエネルギー消費、CO2排出量増大が加速している。それも「先進国問題」となっている。OECD諸国でのCO2排出量は、2013年以来2億5000万㌧減っているが、ICT分野では逆に4億6000万㌧増えている。国別では、米国が一人当たり平均10台のデバイスを使い、利用データのエネルギー消費量はインド人の70倍という。

 

 仏シンクタンク、シフト・プロジェクト(Shift Project)がこのほど「Lean ICT(無駄のないICT)~デジタル節約への道」と題した報告書で指摘している。エネルギー消費となるなど、「先進国問題」であることが鮮明になっている。

 

 ICT分野の製品と使用に伴う直接的なエネルギー消費量は年間9%の伸び率で成長している。グローバルなGDPの成長の2倍以上の伸びだ。その結果、世界のGHG排出量に占めるICT産業からの排出量の割合は、2013年の2.5%から3.7%へ増大している。

 

一番上の赤い曲線はBAU。
一番上の赤い曲線はBAU。

 

 ICTは従来、エネルギーの効率化等、温暖化対策に有益な側面が強調されていた。エネルギー消費をデジタル化することで、無駄を省き、エネルギー供給面でも、再エネなどの変動電力を効率的に電力網に組み込むには、ICTが欠かせないからだ。

 

 ところが、グローバルGDPに占めるエネルギー量全体は年間1.8%減と縮小しているが、ICT分野は逆に年間4%増と増え、エネルギー増大部門になっている。この数字は民間航空業界(2018年時点で2%)を上回り、自動車業界(同8%)に匹敵する。

 

 報告書は、ICTの製造・使用自体による電力消費の増大という直接的影響とともに、ICT利用が増大することで、間接的環境負荷(リバウンド効果と呼ぶ)が増える両面の影響が顕在化していると指摘している。

 

 主な要因は、製品面ではレアメタル採掘等のエネルギー消費のほか、使用面では増え続けるサーバーの空調需要やネットワーク、ターミナルの増大による。また利用面では、大容量伝送となる動画、ストリーミングサービスの増大等で「電力多消費産業」に変わってしまったようだ。こうした直接的なエネルギー負荷の伸びが、年間9%増となっているという。

 

 こうしたICT分野のエネルギー消費の増大の結果、デジタル投資1㌦当たりのエネルギー消費量は2010年以来、37%増えている。温室効果ガス排出量で注目されるのは、OECD諸国のICT関連の排出量が4億5000万㌧も増えている点だ。デジタル化が急速に進展し、電力使用量の多いサーバー、ビッグデータ、動画等のストリーミング等の利用増大が要因となっている。

 

 OECD諸国の平均成長率は2%前後で安定しているが、デジタル関連支出は全体で3~5%増となっている。国別では、2018年時点で、平均的米国人は、一人当たり10台の端末を所有している計算で、使用データ量も月平均140ギガバイトだが、インドは平均一人1台、データ量は2ギガバイトに過ぎない。このため報告書は「デジタル過剰消費はグローバル現象ではなく、高所得先進国での現象だ」と指摘している。

 

https://theshiftproject.org/wp-content/uploads/2019/03/Lean-ICT-Report_The-Shift-Project_2019.pdf