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国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)、丸紅がアフリカのボツワナで推進する石炭火力事業へのファイナンスを停止。事業全体も見送りか。環境NGOが公表(RIEF)

2019-05-27 17:27:32

Btswana1キャプチャ

 

 国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)が、丸紅が韓国の鉄鋼大手のPOSCOと組んで、アフリカ南部のボツワナで計画中のモルプレB石炭火力発電事業向けの資金支援の検討を停止した、と環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)が公表した。同発電所計画は、CO2排出量の多い亜臨界圧タイプで、パリ協定の目標と合致しないと、KIKOなどが見直しを求めていた。JBIC、丸紅等は公式なコメントは出していない。

 

 (写真は、すでに稼働中のモルプレB発電所の一部)

 

 丸紅は2015年に、同石炭火力事業への参画を表明していた。経済成長の著しいボツワナでの将来の電力需要増大に対応するため、すでに石炭火力発電1~4号機が稼動しているパラピエ地区のモルプレB石炭火力発電所を拡張し、5,6号機(150MW✕2基、亜臨界圧)を建設する計画を立てていた。丸紅と、ポスコの子会社、ポスコ・エナジーが50%ずつの出資で合弁会社を設立、計画を進めてきた。

 

 発電所の建設は韓国企業が請負い、主な発電機器などはドイツのシーメンスなどが納入する計画。稼動後は、国営電力公社のボツワナ・パワーに30年間の契約で売電するとしていた。

 

既存の発電所は中国の建設で、トラブル続きという
既存の発電所は中国の建設で、トラブル続きという

 

 ただ、モルプレBでは、これまででも、大気汚染物質の排出濃度基準や大気環境基準の超過が度々測定されており、これ以上、発電所が追加されると、さら大気環境基準を超過することが環境アセスメントで想定されている。また亜臨界圧発電所は、日本の銀行の取り組みで議論になる超々臨界圧発電(USC)や、超臨界圧発電(SC)よりも、さらに発電効率が悪いタイプだけに、環境NGOからの反発も強かった。

 

 同事業の総事業費は8億㌦(約880億円)と見込まれ、JBICやNEXIと韓国輸出入銀行による公的融資・保証をバックに、日本のメガバンク等がプロジェクトファイナンスで融資するとみられていた。このため、内外の環境NGOは、丸紅やJBICに対して事業中止・支援中止を求めてきた。

 

 一方、丸紅にも誤算が生じていた。相次ぐ石炭火力発電所の建設で、ボツワナ政府が将来の電力供給過剰、電力料金高騰を懸念する事態になっていたまた中国製の既存の1~4号機が再三、稼動停止に見舞われるトラブルも起きていた。こうしたこともあって、ボツワナ政府は丸紅等との電力購買契約に際して、丸紅側が要求していた契約保障のための多額の預託金拠出を拒否するなど、電力購買契約交渉は難航していた。

 

 KIKOなどは、「私たちの質問への回答により、JBIC、NEXIが支援検討を停止したことが判明したが、支援検討を停止した理由についての回答は得られていない」と説明している。グローバルな脱炭素化の流れに逆行することで、公的支援を停止したのか、事業そのものがボツワナ政府との不一致で見直さざるを得なくなったのかは、不明だ。

 

 丸紅は、JBIC、NEXIの支援を受けて、インドネシアのチレボン石炭火力発電事業・拡張計画やベトナムのギソン2石炭火力発電事業などの建設を推進中。世界のNGOが作成する「Global Coal Exit List」に日本で唯一掲載されている。KIKOなどは、今回のボツワナ案件の停止に続いて、他の計画中・建設中の石炭火力発電事業についても早急な事業中止・支援中止を引き続き求める、としている。

https://www.kikonet.org/info/press-release/2019-05-24/statement-for-+MorupuleB