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気候変動情報の開示を促進する「TCFDコンソーシアム」設立。官庁の音頭取りで、支持日本企業数が急増。国別では世界最大数に(RIEF)

2019-05-28 07:27:46

TCFD3キャプチャ

 金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)勧告を支持する日本企業連合(TCFDコンソーシアム)が27日、発足した。日本の賛同企業・団体は164機関に達しており、英米(約100)を超えて国別では世界最大という。経産省、金融庁らが旗振りして立ち上げたため、「お上にならえ」ということかもしれない。

 コンソーシアム自体は、経団連の中西宏明会長ら、産業・金融のCEOら6人が呼びかけ人となって設立した。民間の「自主的な行動」の形をとっている。経産省らはあくまでも「オブザーバー」の形。

 設立総会には各省の担当相らのあいさつや、TCFDからも、Mary Shapiro TCFD議⻑補佐官がビデオメッセージで、日本での官民の取り組みに賛辞を送った。https://rief-jp.org/ct4/90123

Mary Shapiroさんは元米SEC委員長でもある
Mary Shapiroさんは元米SEC議長でもある

 現在の勧告への支持企業数はグローバルに約700社・団体。164機関の日本勢は全体の2割強を占めることになる。2017年6月の勧告公表時には、グローバル企業約100社が支持を表明、そのうち日本勢は、住友化学と国際興業の2社だけだった。つまり、2%から20%超へと、日本勢の支持企業数は増えたことになる。

 特に昨年後半以降の伸びが顕著だった。9月にTCFDが初の現状報告レポート(Status Report)を発表した際、全支援企業数は513社で、日本勢は25社。その後12月に経産省が「TCFD ガイダンス」を発表して、政府主導色を明確にしたことから、その後の支持表明企業の半分以上が日本勢という「ジャパン・ラッシュ」の様相を呈した。http://rief-jp.org/ct4/83125

 同業他社が支持表明すると、負けじと名乗りをあげ、さらに当局が旗を振るとはせ参じる形となったようだ。TCFD勧告は気候変動の影響の大きいとみられる特定セクターとして、エネルギー、素材と建築物、運輸、農業・食料・林業製品の4産業、それに金融業を選んでいる。実際にはこうした特定セクター以外の企業も日本では名乗りをあげている。「TCFD支持」が一つのステータスと考えられているのかもしれない。

  TCFD勧告支持企業は、自社の資産等が温暖化の進展をシナリオ分析し、企業価値に及ぶ影響を自ら検証し、ストレステストによって対応力を市場(投資家)にアピールする必要がある。現時点では、そのシナリオ分析の方法論や、どのシナリオを採用するのかが定まっておらず、コンソーシアムに参加した企業の多くは、当局による産業別のシナリオモデルの設定を期待しているようだ。

 欧米のエネルギー産業等はすでに自社でシナリオ分析とともに、対応策を投資家向けに説明するところも出ている。横並びの日本勢が、先行するグローバル企業の開示状況にどう対抗していけるか。とりあえず、コンソーシアムの団結力に期待しよう。

https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190521003/20190521003-1.pdf