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WWFジャパンの「日本企業の温暖化対策ランキング:素材産業」、化学等、平均以上のスコア。再エネ目標やパリ協定との整合性目標など少ない。トップはレンゴー、次いで住友化学(REIF)

2019-05-29 22:36:50

WWF22キャプチャ

 

 環境NGOのWWFジャパンは、「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトの第10弾として、素材産業の調査結果を公表した。対象産業は化学、ガラス・窯業、ゴム製品、繊維製品、パルプ・紙の5業種。合計55社で、「繊維」を除く他の産業のスコアは平均点以上。ただ、再生可能エネルギー目標を掲げる企業は4社、パリ協定と整合的な目標設定も3社だけと、先行きへの対応の不十分さも伺えた。スコアではパルプ・紙のレンゴーがトップ、次いで化学の住友化学、富士フィルムの順。

 

 WWFは、同ランキング調査を 2014 年に開始。「電気機器」を筆頭に、「輸送用機器」「小売業・卸売業」などの10産業の評価を実施してきた。公開された環境報告書等の情報をベースに、各企業の取り組みを、① 目標および実績②情報開示、の2カテゴリーに分類、合計21の評価指標で横断的に評価する。

 

 環境影響や戦略等の「開示」面だけではなく、(環 境報告書類から判別できる範囲での)目標に向けた対策の 「実施状況」にも焦点を当てている。

 

化学産業のスコアとランク
化学産業のスコアとランク

 

 今回の調査対象の産業は「化学」(37社)、「ガラス・土石製品」(7社) 、「ゴム製品」(4社)、「繊維製品」(4社)、「パルプ・紙」 (3社)。

 

ガラス・窯業
ガラス・土石製品

 

 その結果、業界全体の総合得点の平均は、「化学」が53.7点、「ガラス・土石製品」が44.0点、「ゴム製品」が56.6点、「繊維製 品」が39.7点、「パルプ・紙」が59.9点だった。「パルプ・紙」、「ゴム製品」はこれまでの平均業種を大きく上回り、「化学」も高水準だった。ただ、「繊維製品」は過去の調査業種の中でも低位だった。

 

ゴム産業
ゴム産業で偏差値60以上は横浜ゴムだけ

 

 WWFが重視する重要7指標では、全業種とも、「ライフサイクル(LC)全体での排出量の把握、開示」の評価点が高いほか、自社事業の上流・下流での排出量の「見える化」への取り組みが27社(49%)と、過去の他の産業よりも高水準だった。

 

繊維産業は全体的に低位
繊維産業は全体的に低位

 

 開示情報に対して「第3者による評価(検証)」を受けている企業が29社(53%)と、過去最多だった 「医薬品」編(43%)を大きく上回った。また今回初めて調査対象の全55社が環境報告書類を発行していた。WWFは、有害物質を扱う化学関連の業種特性が情報開示を重視する姿勢が生み出しており、それが温暖化対策にも反映している、と評価している。

 

パルプ・紙産業ではレンゴーがダントツ
パルプ・紙産業ではレンゴーがダントツ

 

 ただ、「目標・実績」の面では、総量削減目標を掲げる企業が30社(55%)と過去の業種平均(42%)よりも比較 的多いものの、パリ協定に沿った「長期的なビジョン」を掲げた上で、整合性のある目標設定をおこなってい たのは3社(住友化学、横浜ゴム、レンゴー)だけ。最新の温暖化の科学やパリ協定ではなく、10年前の世界のビジョンや目標を 参照していると思われる例も散見された、としている。

 

  各業種内で偏差値60以上を記録した上位企業は計7社。住友化学、横浜ゴムは科学と整合した削減目標(SBT:Science Based Targets)にも取り組んでいる。再エネ目標を設定する4 社(日本化薬、富士フイルムHD、横浜ゴム、レンゴー)のうち、日本化薬、富士フイル HD、横浜ゴムなどは調達コスト面で有利な海外事業所から先に導入を進めている。

 

WWF29キャプチャ

 

https://www.wwf.or.jp/activities/data/20190517_climate01.pdf