HOME4.市場・運用 |国際エネルギー機関(IEA)、2018年の天然ガス需要伸び率が過去最大。石炭からの切り替えが主因。ただ、「再エネ転換を遅らせる」との懸念の声も(RIEF) |

国際エネルギー機関(IEA)、2018年の天然ガス需要伸び率が過去最大。石炭からの切り替えが主因。ただ、「再エネ転換を遅らせる」との懸念の声も(RIEF)

2019-06-08 18:08:31

IEAGas2キャプチャ

 

 国際エネルギー機関(IEA)によると、2018年の天然ガスの世界全体の需要は過去最大だった。石炭に比べてCO2排出量が比較的少ないことが需要増の一因。特に中国等アジア諸国での増加が大きい。ただ、環境NGOらからは、石炭からガスへの切り替えは、再生可能エネルギー発電への移行を遅らせ、温暖化対策に逆行するとの声もあがっている。

 

 IEAがこのほど公表した「Gas Report 2019」で分析した。2018年の天然ガス全体への需要は前年比4.6%増で、2010年以来でもっとも高い伸び率だった。その結果、18年全体のエネルギー需要増のほぼ半分(45%)を天然ガスが占めたことになる。

 

LNG1キャプチャ

 

 IEAの予測では、今後5年間も天然ガスは10%以上の伸びを示し、2024年にはガスの総使用量は4.3兆㎥(tcm)になるとしている。

 

  天然ガス需要の増大要因は、供給面では米国におけるシェールガスの増産が大きい。需要面では中国やアジア諸国等の成長が続く地域での需要増が主因。中国の18年の天然ガス需要は18%増と大きく伸びた。中国は石炭に代わる低炭素のエネルギー源として天然ガスへの切り替えを進めている。

 

 今後の需給動向を地域・国別にみると、2024年までに需要増分の60%をアジア諸国(中国含む)が占める。中国はその中心だが、今後の経済成長率が次第に低下することに伴い、天然ガス需要増の比率もやや鈍化する。しかし、依然、全体需要増のほぼ40%を占める見通し。

 

LNG2キャプチャ

 

 2024年にかけての生産の見通しでは、米国と中国が全体の半分を占める。ただ、中国は国内需要が旺盛なため輸出に回せない。これに対して、シェールガス生産の好調が続くとみられる米国は、グローバルガス輸出市場の半分以上を占める見通しだ。

 

 需要面の予測では、中国、アジア、中東等が今後も増加するのとは対照的に、日本は24年にかけてガス需要は減少する。これはエネルギー需要全体の減少に加えて、再エネ電力の増加、原子力発電の再稼働などから、ガスシフトがそれほど進行しないとみられているためだ。

 

 輸出入の予測をみると、輸入ではこれまで日本が突出して高い輸入国の座を占めているが、2024年にかけてはガスの輸入絶対量自体が緩やかに減少し、24年前後には中国の需要に追い抜かれる見通し。輸出面では、2020年ころまでは中東のカタールが市場リーダーの座を続けるが、その後はオーストラリア、24年には米国に抜かれるとみられている。

 

loanrealキャプチャ

 

 IEAは、従来の石炭に比べて、天然ガスは大気汚染を改善し、CO2排出量の増加抑制に一役買ったと評価している。しかし、環境・エネルギー分野の専門家やNGOらからは、天然ガスは石炭よりCO2排出量は少ないものの、CO2より温暖化効果の高いメタンの漏出リスクのほか、ゼロエミッションの再エネ発電への切り替えを遅らせてしまうリスクもある、との懸念が出ている。

 

 IEA事務局長のファティ・ビロル(Fatih Birol)氏は「石炭火力や石油火力に代わって、ガスは環境汚染を減少させ、エネルギー由来CO2の排出増の抑制に役立っている。ただ今後は、新興国市場での他のエネルギー源との価格競争、さらにサプライチェーン全体でのメタン漏洩リスクへの対応が求められている」と指摘している。

https://www.iea.org/gas2019/