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総合化学大手のデンカ、米子会社の工場で、「発がん性のある有害物質汚染」の批判。米住民らが来日、抗議行動。デンカは「データは過大評価」と反論(RIEF)

2019-06-25 12:21:05

denka2キャプチャ

 

  総合化学大手のデンカ(東京)の米ルイジアナ州にある子会社「デンカ・パフォーマンス・エラストマー(DPE)」の工場が製造する化学物質が原因で、周辺住民の発ガン事例が相次いでいる、として同地の住民や環境NGOらが来日、デンカの株主総会会場前等で抗議行動を行った。実際にDPEの工場周辺では環境保護庁(EPA)から「高発ガンリスク地域」に指定されているが、デンカは「データが過大評価されている」と反論している。

 

 焦点になっているのが、ルイジアナ州ラプラスにあるDPEのポンチャートレイン工場。DPEはデンカと三井物産の共同出資会社だ。デンカは2015年11月にデュポンから工場を譲り受け、化学品のクロロプレンゴム(CR)を製造している。CRは合成ゴムで、耐熱性、耐油性などは天然ゴムよりすぐれ、ベルトコンベアやロール、ウェットスーツなどに使用されている。

 

 デンカがルイジアナの工場を取得した約1ヵ月後、EPAは同工場の周辺地域を、国家大気有害物質評価(NATA)に基づき、「高い発ガンリスクのある地域」に指定した。

 

現地の工場周辺で抗議行動を展開する住民たち
現地の工場周辺で抗議行動を展開する住民たち

 

  デンカによると、DPEは工場取得後、一貫して排出基準を順守した操業を続けている。EPAや州の規制当局からの照会にも対応、従業員や地域住民と情報共有してきたほか、2017年12月には排出低減装置を導入し、大幅な排出削減を達成した、と説明している。

 

 EPAはCRを「ヒトに対する発がん性を有する恐れが高い」有害物質に指定し、「許容可能な上限値」を1㎥当たり0.2μgとしている。住民たちは、DPEの工場周辺では、現在でもその何十倍もの量のCRが排出されている、と指摘している。また同地での発ガンリスクは全米平均の50倍以上になっているとしている。

 

 デンカ側は、DPEの主張としてNATAのデータは発がんリスクを過大評価しており、科学的根拠にも論争があると強調。同工場の従業員を含むCR製造工場の従業員を対象とした疫学調査(対象者:約1万2000人以上)では「一般人のがん死亡率より低く、CRの曝露量と発ガン性には相関性が見出せない」との結果が出ているなどとしている。DPEがEPAと共同でCRの毒性評価の見直し作業を進めている、とも述べた。

 

 しかし、住民らは、米NGOのUNHR(University Network of Human RIghts)による工場周辺500世帯以上を対象とした調査では、「ほとんど自然には起こりえない割合でがんが多発している」ことが検証されたとしている。工場のある隣町のリザーブ町もがん発症率が高く、住民らは「黒人街だから、大気が汚染されてもいいというのか?」「黒人だから、がんで死んでもいいというのか?」と反発、デンカの対応は、「環境レイシズム」にも相当すると批判している。

 

 デンカは、CRの生産で世界のトップシェアを持つ、そのうちDPEの生産能力は推定年5万㌧。

https://www.denka.co.jp/

http://www.parc-jp.org/freeschool/event/190624.html