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CO2を燃料電池を貯蔵する「水素キャリア」に、高効率で転換するための「有機触媒」を発見。東京工業大学と産業技術総合研究所のチーム(RIEF)

2019-07-08 17:39:05

CO23キャプチャ

 

 東京工業大学の本倉健准教授と国立研究開発法人産業技術総合研究所の眞中雄一准教授らのグループは、CO2を燃料電池に使う「水素キャリア」の「ギ酸」に効率的に転換できる触媒を発見した。同触媒とCO2が反応すると、高効率のギ酸化合物を生成できる。CO2を資源化するプロセスの確立に資することが期待できるという。

 

 発見した触媒は、「ギ酸有機アンモニウム」の一種である「ギ酸テトラブチルアンモニウム」。この触媒を用いると、CO2からギ酸シリルを99%の選択率で維持しつつ、高い触媒回転数(TON:触媒1分子が触媒反応を起こさせる能力を意味する)の進行も高めることができる。従来の金属系触媒を使う場合は、選択率は高くても、TONは低いレベルにとどまっていた。

 

 CO22キャプチャ

 

 今回の「ギ酸テトラブチルアンモニウム」を触媒とする場合、1気圧、60℃で反応が進む。反応後は濾過し、室温まで冷やすことで触媒が分離、再使用が可能になる。TONは従来方法の2倍以上の1800に進行する。

 

 触媒は、環境負荷も少なく、コストも安井。生成したギ酸シリルは、水を加えるだけで容易にギ酸に転換できる。ギ酸は燃料電池に使う水素を安全に運搬・貯蔵できる「水素キャリア」として活用が期待されている。放電する電気エネルギーと異なり、ギ酸は半永久的に保存が可能で、その分、発電効率が高まる。

 

 CO21キャプチャ

 

  CO2は安定で反応性の低い分子であるため、従来の方法では特殊な金属や希少な元素が必要で、安定で安価に供給できる有機分子触媒はこれまで見つかっていなかった。今回の研究成果は米国科学誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineeringオンライン速報版」に2019年5月30日に公開されている。

 研究チームは「今回見つかった有機分子触媒によって、今後のCO2転換のため設計指針を大きく変える可能性がある。より安価かつ入手容易な還元剤を用いるCO2変換反応へと適用範囲を広げることで、CO2資源化プロセスの確立へ資することができると考えられる」と位置づけている。

 

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssuschemeng.9b02172