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国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の最新進捗レポート公表。貧困や電力アクセス等は改善するも、改善スピードは緩やか。「もっと野心的な取り組みが必要」とグテレス国連事務総長(RIEF)

2019-07-11 18:29:42

SDGs5キャプチャ

 

  国連は持続可能な開発目標(SDGS)の最新進捗状況をまとめた「SDGs2019年レポート」を公表した。2016年からの取り組みの成果として、最貧地域や幼児死亡率の改善が進んでいるほか、電力へのアクセス増加等などの成果を指摘する一方で、飢餓の増大、人口の半分以上が健康サービス不足に直面、子どもの半分は十分な教育を受けられないという状況も続く。気候変動による海面上昇、自然災害増大のリスクに弱者ほどさらされている。グテレス国連事務総長は「目標達成にもっと野心的な対応が必要」と強調している。

 

 SDGs1は17の目標と196のゴールを設定している。レポートは17の目標ごとに進捗状況を報告している。主な目標についての改善・悪化状況をみてみよう。

 

 第1目標の「貧困をなくそう」では、一日1.90㌦以下で生活している人の割合は、SDGsスタートの2015年は9.9%だったが、18年は8.6%と改善、10年の16%、90年の35.9%から確実に減少していることが確認できた。過去25年間で約10億人が極度の貧困から脱出したことになる。

 

一日1.9ドル以下の生活を強いられる人々の比率
一日1.9ドル以下の生活を強いられる人々の比率

 

 特に東アジア諸国での改善が顕著で、最近では南アジアでも改善傾向がうかがえる。ただ、今後の予想では、改善のスピードが鈍化しており、このままの傾向が続くと2030年でも6%の人口は、極度の貧困から脱せないという。1.90㌦以下の生活を送っている人の半分以上がアフリカのサブサハラ地域に集中している。

 

 第2目標の「飢餓をゼロに」では、2000年に採択されたSDGsの前身の「MDGs(ミレニアム開発目標)」の過程で改善がみられ、飢餓人口比率は2005年の14.5%から14年には10.7%に低下した。しかし、SDGs直前の14年以降は横ばいないし若干の増加で、17年は10.9%にとどまっている。飢餓人口の絶対数も14年の7億8400万人から、17年は8億2100万人に増加している。アフリカのサブサハラ地域での経済悪化の影響が大きいという。

 

飢餓比率は改善傾向だが、依然、8億人以上が餓えに苦しむ
飢餓比率は改善傾向だが、依然、8億人以上が餓えに苦しむ

 

 「健康と福祉を」の第3目標は、大きな改善が図られた分野だ。妊婦と幼児の死亡率は減少し、平均寿命もグローバルに伸びた。ただ、世界人口のほぼ半分は依然、経済的理由で十分な健康サービスを受けられない状況にある。貧富の格差が人々の健康維持に明瞭に反映している。

 

 第7目標の「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」も前進がみられた。電力にアクセスできる人の割合は、2010年(83%)から、15年(87%)、そして17年(89%)と上昇している。しかし、依然、8億4000万の人々が無電化状態で暮らしている。その多くがサブサハラ地域。また30億人近くが食事用のクリーンな燃料に事欠いている。

 

電力へのアクセスは改善
電力へのアクセスは改善

 

 「気候変動に具体的な対策を」とする第13目標では、グローバルな温室効果ガス濃度が2017年に405.5ppmと400ppm台を突破、産業革命前から1146%増と増え続けている。気温上昇を1.5℃に抑えるには、2030年までに世界の温室効果ガス排出量を2010年比で45%まで削減する必要があると指摘している。すでに気候変動に伴う自然災害の悪化は進展しており、1988年から2017年の間で世界で起きた災害による経済損失の77%は気候変動の影響だと警告している。

 

https://unstats.un.org/sdgs/report/2019/