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日本貿易保険(NEXI)、日本企業の再エネインフラ輸出に、特別保険制度創設。損失保証率を97.5%までカバー。石炭火力等に代わるクリーンインフラ輸出促進につながるか(RIEF)

2019-07-17 00:36:30

NEXI2キャプチャ

 各紙の報道によると、日本貿易保険(NEXI)は、日本企業による風力や太陽光など再生可能エネルギー発電事業等のインフラ輸出を支援する貿易保険を近く創設する。環境対策や社会貢献などのESG情報開示を踏まえ、事業の破綻などによる損失保証率を通常の90~95%から一律97.5%に引き上げ、事業に融資する金融機関の貸し倒れリスクを肩代わりし、日本企業の再エネ輸出を後押しする。

 政府が打ち出している新たなインフラ輸出戦略を金融面から支援するのが目的。NEXIの新たな貿易保険は、風力、太陽光、地熱、バイオマスなどの再エネ事業のほか、スマートグリッド(次世代電力網)などの省エネルギー技術、水素や燃料電池なども含む。各分野で日本企業が海外でのインフラ事業に出資や機器の輸出を行う場合に支援する。

 これらの事業に融資する民間金融機関が、事業が不調で回収できなくなった場合、NEXIがほぼ全額(97.5%)を保証する。金融機関は実質的な貸し倒れリスクを最小化できるほか、海外でのインフラ事業の利ザヤは国内事業より大きいことから、積極的に投融資すると期待される。

 NEXI1キャプチャ

 すでに、三井住友銀行、みずほ銀行、伊予銀行の3行が、南米チリで双日と四国電力などが手掛ける大規模太陽光発電事業への支援を決めている。また三井物産が出資するアルゼンチンの風力発電事業でも、世界銀行グループの多国間投資保証機関(MIGA)が提供する投資保証の再保険をNEXIが引き受ける。

 チリの事例では、邦銀3行が融資する18年間の事業資金のうち、NEXIは約4700万㌦(約52億円)分に損失保証を付与する。事業はチリ北部のアタカマ砂漠に9万8000kWの太陽光発電所を建設し、完成後はチリ国内の卸電力市場を通じて売電する。事業会社への出資金の9割は日本勢が占めている。

 三井物産のアルゼンチンの風力発電事業は、総事業費約250億円。アルゼンチン南部に発電容量97MWの風力発電所を現在、建設中。物産は事業会社に34%を出資し、2019年内の商用運転開始を目指している。NEXIは、MIGAが同事業に付与している投資保証の一部を再保険で引き受ける。

 

 再保険の対象リスクは、アルゼンチン政府による事業の国有化や戦争、契約不履行などが原因で、開発事業からの送電や料金回収ができなくなった場合に損失を補うというもの。

 

 NEXIはこれまでアジアを中心にした途上国での石炭火力発電事業等に投資保証を付与してきた。だが、「温暖化進行に日本政府が手を貸す」との批判がNGOや現地住民らから高まり、事業進行が宙に浮くリスクが生じるケースも出ている。

 

 今回の再エネ事業へのNEXIの保険付与は、政府がインフラ輸出戦略の中で、再エネ事業を今後の重点分野として位置づけたことを踏まえている。NEXIは、インフラ事業輸出後の保守管理にも関与し、日本企業が継続的に収益をあげられるように支援するという。事業継続化が図られると、NEXIが肩代わりする保証リスクも低減することになる。

https://www.nexi.go.jp/index.html