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世界最大の資産運用機関のBlackRock、「90億㌦の巨額損失」指摘に反論。「運用の大層を占めるパッシブ運用はインデックス運用で、利用者が恣意的な指図はできない」と(RIEF)

2019-08-11 00:12:59

BlackRock3キャプチャ

 

  世界最大の資産運用機関の米BlackRockは、先に、化石燃料関連企業向けの金融リスクを十分評価しない投資を続けて、過去10年間に推計約900億㌦(約9兆9000億円)の損失を出した、との批判を受けたことに対して、「指摘は誤った誘導だ」との反論をまとめた。

 

 BlackRockの「巨大損失」を指摘したのは、非営利の米民間シンクタンク「 Institute for Energy Economics and Financial Analysis (IEEFA)」。

 

 同機関の分析は、BlacRockは化石燃料関連企業向けの金融リスクを十分評価せず投資を続けた結果、過去10年間で資産価値下落と機会損失コスト合計で約900億㌦(約9兆9000億円)の損失を投資家に与えた、と指摘。損失の75%はExxonMobilなどエネルギー企業への投資で、ポートフォリオのパッシブ運用での低炭素投資戦略の不備もあげている。http://rief-jp.org/ct6/92432?ctid=69

 

BlackRock23キャプチャ

 

 これに対してBlackRockは、IEEFAの指摘した投資分を含め、同社の資産運用の大半は、「指数連動の上場株式リンクのETF(上場投資信託)や、外部指数による投資評価付き指数商品等で運用している」と説明。「BlackRock内部の(大規模な資産運用の)インデックスマネージャーも、ETFなどのインデックスのパフォーマンスを複製して運用しており、その際に、自社の判断で、特定の企業を除外したり、選別することはない」と反論した。

 

  つまり、インデックス会社が一定の方法論に基づいて選別したETF等のインデックスに基づいて投資しているため、意図的に化石燃料会社等を選別するようなことはしていない、との主張だ。温暖化対応を理由として特定の銘柄を優先するといった投資判断も、市場の需給を歪めるとの主張もあるようだ。

 

 自社のインデックスマネジャーが準拠するETFなどのインデックス会社についても「彼らは、自らのインデックス・メソドロジーに基づくインデックスに沿って対象企業を選考している(方法論とは別の意図で除外したり、選別はしていない)。したがってIEEFAの結論は間違えている」と、客観性を強調した。

 

 ただ、IEEFAは、4兆3000億㌦のパッシブ運用を展開しているBlackRockが、既存のインデックス運用に乗っかるだけの運用をしていること自体を、市場のリーダーとしての自覚がないと、批判している。BlackRockがパッシブ運用でESG運用やサステナブル運用を展開しようと思えば、インデックス会社がBlackRock用にそうした投資目的の客観的な指数を開発できるはずとの指摘だ。

 

 IEEFAは、「BlackRockの運用資産額は、日本のGDPを上回る規模であり、市場のリーダーとしての役割を果たすべきである。なのに、石炭関連事業への対応に遅れているだけでなく、エネルギートランジション(移行)にも遅れている」(報告書の共同執筆者のTom Sanzillo氏)と、BlackRockの反論を再批判している。

 

 IEEFAによるBlackRock批判は、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のESG運用についても当てはまりそうだ。GPIFの場合もパッシブ運用では、インデックス運用を活用している。ESG運用等は資産運用機関への委託運用で、委託機関に対して、化石燃料関連企業を名指しして除外等を求める関係にはなっていない。

 

http://www.funds-europe.com/news/blackrock-disputes-report-on-dirty-energy-investment-losses