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丸紅と関電が推進する「秋田港石炭火力発電所事業」着工を見送り。「中止かどうか不明」。世界的な石炭火力見直しを反映(RIEF)

2019-08-13 22:09:01

akita2キャプチャ

 

 丸紅(東京)と、関西電力系の関電エネルギーソリューション(大阪市)は、秋田市で進めていた「秋田港石炭火力発電所事業」の着工を見送った。環境影響評価(アセスメント)書では、着工時期を当初計画通り「2019年8月」としていた。計画自体を断念したかどうかは不明だが、石炭火力事業を見直す世界的な動きを反映したものとみられる。

 

 (写真は、秋田港石炭火力発電所の完成予想図)

 

 報道した秋田魁新聞は、関電エネルギーソリューションのコメントとして「石炭火力発電事業を取り巻く環境を踏まえつつ、計画を検討している。着工の時期は未定」としている。

 

 両社の石炭火力発電所計画は、秋田県有地の秋田湾産業新拠点に出力65万kWの石炭火力発電設備2基を建設するもの。2~3月に縦覧に付した環境アセス評価書が示す着工時期は「2019年8月」、運転開始を「2024年」としていた。だが、今回の報道が伝えるように、着工は先送りされている。

 

akita1キャプチャ

 

 計画のアセスに対しては環境相が昨年9月、「CO2排出削減の具体的道筋が示されないまま容認されるべきではない」とする意見を経済産業相に提出。経産相はこれを踏まえ、一層のCO2排出削減に努めるよう勧告していた。http://rief-jp.org/new/83419

 

  ただ、昨年12月に環境影響評価書に対する確定通知が出され、アセス手続きは完了したが、丸紅はその前の同年9月に脱石炭火力に向けた方針を発表したことから、秋田事業計画への反映の有無が注目されていた。https://rief-jp.org/ct4/82807 http://rief-jp.org/ct4/83602

 

 今回、両社とも発電所の新設計画は「検討段階」とし、秋田県には「事業化の判断に時間を要する可能性がある」と説明しているという。一方で、着工延期に伴って送電線や鉄塔の新設工事の申し込みを取り下げたとされる。

 

秋田湾での建設用地
秋田湾での建設用地

 

 環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)によると、過去に、東北電力が能代火力発電所3号機の環境アセスを完了してから未着工のまま数十年を経た後に、建設を再開し、今月1日に稼働を開始した事例があることから、関電と丸紅の対応にも警戒を示している。

 

 KIKOは、「将来的には石炭火力の優位性は現在よりも低下していることが見込まれるので、事業者はいたずらに計画を塩漬けにするべきではない」と指摘している。

 

 グローバルには、石炭火力発電所は経済的にも、再生可能エネルギー発電等に比べて、コスト高が指摘されているほか、将来の温暖化の進展に伴って、事業自体の停止リスクや、資産価値の下落リスクが高まっている。

 

 エネルギー政策を担う経済産業省は、石炭火力推進の旗を降ろさない状況が続いている。だが、さすがに企業サイドでは、石炭火力発電の事業リスクの高さを意識し、2012年以降に経産省が認めた国内50基の新設計画のうち、13基が計画中止(燃料転換を含む)になっている。2018年末以降でも、約100万kWの設備容量の大規模石炭火力発電所計画が3基中止になっている。

 

https://www.sakigake.jp/news/article/20190807AK0004/

https://www.kikonet.org/info/press-release/2019-08-09/akitako-coal-power