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神戸製鋼傘下の米ミドレックス、世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミダルと、水素活用の低CO2製鉄法開発で協力。「脱炭素」の流れ、いよいよ鉄鋼業にも波及か(RIEF)

2019-09-17 18:17:56

kobelco2キャプチャ

 

 神戸製鋼は傘下の100%子会社の米ミドレックス社(Midrex Technologies, Inc)が、世界最大の鉄鋼メーカーのアルセロール・ミダル(ArcelorMittal)が進める水素を還元材とする低炭素製鉄プロジェクトに、水素活用の直接還元製鉄法の技術サプライヤーとして採用された、と発表した。アルセロール・ミダルがドイツ・ハンブルグ工場内で建設する世界最大規模の実証プラントの設計にも携わる。CO2高排出産業の代表とされた鉄鋼業の脱炭素化への一歩となるか、期待される。

 

 (写真は、技術サプライヤー協定を結ぶミドレックス幹部㊧側3人、とアルセロール・ミダル幹部㊨側3人)

 

 通常、鉄鋼の生産は、高炉内で、鉄鉱石と炭素(コークス)燃料を一緒に燃焼させることで、生成されたCOにより鉄鉱石が還元される反応によってできる。これに対して、ミドレックス社は高炉に頼らず、主に天然ガスを利用して鉄鉱石を還元する直接還元鉄(DRI)プラントを開発してきた。同社はこのDRIで世界の約6割のシェアを持つ。

 

 ただ、天然ガスを還元剤とすると、副産物として水と一定量のCO2が生成される。そこで、今回、天然ガスの代わりに水素を利用することでCO2の生成をなくし、水だけが発生する低炭素型の仕組みに切り替える技術を検証する。実証プラントでは、還元剤の天然ガスの使用でプラントの炉頂ガスに含まれる水素を回収し、水素還元の実証を行う。

 

ドイツ・ハンブルグにあるアルセロール・ミダルの実証プラント
ドイツ・ハンブルグにあるアルセロール・ミダルの実証プラント

 

 アルセロール・ミダルの水素還元の実証プラントは、年間約 10 万㌧の還元鉄を生産できる予定で、 水素のみを還元剤とする直接還元鉄プラントとしては世界最大規模になるという。

 

 ミドレックス社は、1983年に神戸製鋼が買収した。米ノースカロライナ州シャーロット市を本拠とし、従業員172人の小規模な会社だが、DRIの製鉄技術は1969年に第一号機を米国内で納入して以来、これまでに世界中で79基を提供している。昨年6月には、同方式による還元鉄の累計生産量が10億㌧に達した。

 

 また、従来の高炉による鉄鋼の生産量の現在の伸びは、全世界で僅かに年率数%の伸びであるのに対して、直接還元製鉄法による鉄鋼生産量の伸びは、1970年の年間約80万㌧から2005年の約5500万㌧と飛躍的な増加を示している。

 

 アルセロール・ミッタル社は、「世界最大の直接還元製鉄法の技術サプライヤーであるミドレックス社とともに、低炭素製鉄が中長期的には実現可能であることを証明したいと考えている。 今回のハンブルクにて行われる実証試験はその第一歩だ」コメントしている。

 

  神戸製鋼も、「当グループも、この取り組みを通じて、CO2を削減できる技術・製品・サービスの提供を行い、 CO2排出削減に貢献していきたい」としている。同社には、日本でも実証実験を始めてもらいたい。

 

https://www.kobelco.co.jp/releases/files/20190917_1_01.pdf

https://corporate.arcelormittal.com/news-and-media/news/2019/sep/16-06-2019