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責任投資原則(PRI)の理事選挙始まる。焦点はサービスプロバイダーの1席。Vigeo Eirisの現職に、SustainalyticsのCEOが挑戦。両社主要株主のMoody'sとMorningstarの思惑も(RIEF)

2019-10-04 18:17:24

PRI44キャプチャ

 

     国連支援の責任投資原則(PRI)の理事改選選挙が始まった。今回は資産保有機関代表の2席と、サービスプロバイダーの1席が署名機関による投票対象。注目を集めるのが、サービスプロバイダーの理事ポストで、グリーンボンドのセカンドオピニオン業務で競うSustainalyticsの代表と、Vigeo Eirisの代表の競い合いだ。両社の主要株主であるMorningstar とMoody’sの代理戦争の様相でもある。

 

 (写真は、サービスプロバイダーの理事ポストをめぐって争うVigeo EirisのWebster氏㊧とSustainalytics のJantzi氏㊨)

 

 PRIの理事ポストは、議長(Martin Skancke)以外に、資産保有機関代表が7人、資産運用機関代表2人、サービスプロバイダー1人の10人で構成する。通常は、多数を占める年金・保険等の資産保有機関の理事ポストに関心が集まるが、今回は、サービスプロバイダーの1席に耳目が集まっている。

 

 PRI2キャプチャ

 

 同ポストに名乗りをあげたのは4人。現職のVegio EirisのPeter Webster氏も、引き続きの就任を目指している。だが、最大のライバルとみられるのが、グリーンボンドのセカンドオピニオンビジネスで競合するSustainalyticsのCEO、Michael Jantzi氏だ。このほか、責任投資の豪コンサル企業のGlobal Impact Initiativeの代表、もう一人も同じく豪州ESG会社Regnan Governance Research and Engagementのアドバイザーも手を挙げている。

 

  Jantzi氏は立候補に際して、「選挙公約」の中で、自らが設立したJantzi ReserchからSustainalyticsとの統合を経た今日までの約30年に及ぶ責任投資分野での経験をアピール。「私が選ばれたら、PRI原則に参加する新たな投資家を後押しし、サステナブルファイナンスシステムの達成に向けて障害になっているものを解決していく」と述べている。

 

 さらに、「PRIは今後、資産保有機関や資産運用機関とのパートナーシップを発展させて、ESGデータの品質、リサーチ、ツール、サービスを高めていく重要な役割を果たすべきだ」として、PRIの将来像についても独自の見解を示している。

 

 同氏の立候補は、Sustainalyticsの株を40%所有するMorningstar社が推薦する形となっている。Morningstarは2017年に出資したが、支配する形とはせずJantzi氏の経営権を尊重する形で2人三脚体制を維持している。

 

 これに対して、現職のポストを「守る」形になるのが、Vigeo EirisのWebster氏だ。1983年以来、英EirisのCEOを務め、2015年の仏Vigeoとの合併後は、国際担当を継続している。今年4月にMoody’sがVigeo Eirisの過半数の株を取得後も、同ポストを維持、ESG、責任投資の経験の長さを誇っている。

 

さらに「現職」の強みもある。2016年以来、3年にわたるPRI理事の経験の中で、PRIの今後10年を見据えた「青写真(10 year blueprint)の作成にかかわったことや、TCFD、Climate Action+、さらにEUのサステナブルファイナンス行動計画等、PRIの周辺で多くの新たな動きが続き、PRIとして対応が求められる中で、理事として取り組んできたことを強調している。

 

 両者の票読みは、出身の国別では、Webster氏が英国出身で、英国とアイルランドを合計すると米国に次ぐ第2位の署名機関数となる。さらに仏Vigeoと合併したのでフランス票も上乗せできそうだ。一方のJantzi氏はカナダ出資で、オランダのSustainalyticsを買収したので、カナダ、オランダ票を期待できる。

 

 出身別の票ではWebster氏のほうが有利にみえるが、それぞれの親会社はMorningstarもMoody’sも米国。彼らが米国の署名機関にどれくらい働きかけるかが最終的なカギになりそうだ。

 

 一方、資産保有機関の2議席については、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道氏と、スウェーデンの公的年金AP2のCEO、Eva Halvarsson氏という2人の現職が引き続き就任を目指している。これにもう一人、ブラジルのPREVIの Rafael Soares Ribeiro de Castro氏も名乗りをあげているが、実績と知名度で 、現職2人の優位は動かないようだ。

 

 すでに署名機関による投票は9月30日から11月15日までの予定でスタートしている。新理事が発表されるのは、11月22日。

 https://www.unpri.org/pri/pri-governance/board-elections