HOME10.電力・エネルギー |日本の石炭火力発電の座礁資産リスクは710億㌦(約7兆1000億円)、電力各社の資産劣化要因に。「2℃目標」達成には2030年までに全廃が必要。Carbon Tracker等が報告(RIEF) |

日本の石炭火力発電の座礁資産リスクは710億㌦(約7兆1000億円)、電力各社の資産劣化要因に。「2℃目標」達成には2030年までに全廃が必要。Carbon Tracker等が報告(RIEF)

2019-10-07 17:42:37

CarbonTracker1キャプチャ

 

 日本の電力各社が抱える石炭火力発電所の座礁資産リスクは710億㌦(約7兆1000億円)に上るとの試算が公表された。報告によると、陸上、洋上の両風力発電事業や太陽光発電事業はそれぞれ2025年までに石炭火力よりも発電コストが低下し、パリ協定が定めた2℃未満シナリオを達成するには、日本の石炭火力発電すべてを2030年までに閉鎖しなければならない、と結論付けている。

 

  英気候シンクタンクのCarbon Trackerが東京大学未来ビジョン研究センター、CDPジャパンと連携してまとめた。

 

 報告書は、Carbon Trackerが開発した発電所ごとのファイナンスモデルを用いて、日本国内の新規及び既存の石炭火力の相対的な経済性分析を行った。その結果、設備利用率が48%、または電力料金が72㌦/MWh以下になると、石炭火力発電の事業性はすべて失われる。現状(2018年実績)は、設備利用率74%、電力料金は87㌦/MWh。

 

Carbontracker2キャプチャ

 

 さらに均等化発電原価(LCOE)分析に基づいて各エネルギー源をコスト比較すると、陸上風力、洋上風力、商業規模の太陽光発電は、それぞれ、2025 年、2022 年、2023 年に、石炭火力よりも安価になる。また石炭火力の長期の限界削減コスト(LRMC)は、2025 年には太陽光と洋上風力より、また2027 年には陸上風力よりも高くなると試算された。

 

 基本的に、再生可能エネルギーのコスト低下が進んで、既存石炭火力の設備利用率の低下や電力料金の低下をもたらすため、現在計画中及び運転中の石炭火力発電所が座礁資産(Stranded Assets)化する恐れが高まるという分析結果だ。

 

   電力会社にとって、保有する石炭火力発電所が閉鎖になると、資本投資やキャッシュフローの減少によって座礁資産が増え、財務内容が悪化する。試算ではそうした座礁資産額は710 億㌦(約7 兆1000 億円)に達する。

 

 このうち、少なくとも210億㌦分は、現在計画中、建設中の石炭火力を再検討あるいは中止することで、損失を未然に防ぐことが出来るとしている。

 

 Carbon Trackerの電力部門長であり、今回の報告書の共同執筆者のマシュー・グレイ氏は、「世界の電力市場において技術革命が進んでいる。この革命は日本にも訪れつつあり、政府は、速やかに現在の石炭火力を推進する政策を再検討する必要があることを意味している」とコメントしている。

 

 報告書では、石炭からの転換を加速させることは、投資家、消費者、そして経済全体にとってよいことであり、計画中及び建設中の案件を中止し、さらに既存の発電所の廃止スケジュールを開発することが重要であると主張している。

 

https://www.kikonet.org/info/press-release/2019-10-07/CTI-report-2019