HOME4.市場・運用 |国際エネルギー機関(IEA)、今後5年間で再エネ発電はグローバルに5割増と予測。分散型太陽光発電が世界中で普及、2020年には風力を追い抜く。「気候変動阻止には不十分」と指摘(RIEF) |

国際エネルギー機関(IEA)、今後5年間で再エネ発電はグローバルに5割増と予測。分散型太陽光発電が世界中で普及、2020年には風力を追い抜く。「気候変動阻止には不十分」と指摘(RIEF)

2019-10-21 18:59:12

さい

 

  国際エネルギー機関(IEA)は21日、世界の再生可能エネルギーの今年から2024 年までの5年間の動向を予測した最新予測「Renwable 2019」を公表した。それによると、再エネ全体のグローバルな発電容量は、2024年には5割増(18年比)と着実に増加する。けん引役は引き続き太陽光発電で、分散型電源の普及などが増加分の6割を占める。電源全体に占める再生エネ比率も現状より5ポイント増の30%になる。

 

 ただ、IEAは気候変動を阻止するためには、さらに再エネの増加ピッチを高める必要があると指摘している。

  報告書によると、今後5年間の再エネの発電容量は年率7%のペースで伸び、24年に3721GWにまで拡大する。18年からの増加量は1220GWと、現在の米国の総発電能力と同規模にまで膨らむとみている。

IEA1キャプチャ

 

 各再エネ発電のうち、最も成長が見込めるのが太陽光だ。18年の496GWから、24年には1195GWへと700GW増となり、伸び率は2.4倍増に膨らむ。700GWは日本の現在の総発電量の倍に相当する。現在は太陽光より風力発電の方が発電量は多いが、DPVの成長で、2020年には太陽光が風力を抜き、再エネ発電事業の中で水力に次ぐ2位に浮上する見込みだ。

 再エネ普及が進む最大の要因は、設置コストの低下と、各国政府による支援策継続の両方が大きいという。さらに、家庭や企業・工場等に導入した太陽光発電の発電電力を地域分散型で家庭や企業・工場が自ら消費するDistributed PV(DPV)が、急速に進展すると指摘している。

 IEA事務局長のFatih Birol氏は「再エネはすでに、世界で第二番目の発電源になっているが、長期的な気候変動対応、および大気汚染の改善等を達成するためには、さらに加速させることが必要になる」と指摘している。

 

IEA2キャプチャ

 

 報告書は、そうした再エネ加速のために、克服すべき課題として①政策や規制の不確実性②高い投資リスク③風力や太陽光ともシステム的な統合、の3点をあげている。

 

  これらの課題を克服するうえで期待されるのが、急速に進展するとみられるDPVだ。IEAは2024年までに太陽光発電市場のほぼ半分は、従来の中央集権的なシステムではなく、DPV型になると推計している。新設の太陽光発電に限ると、今後5年間で4分の3はDPV型になるみている。

 

 その最大の理由はやはりコスト低減だ。24年にかけて現状よりも15~35%下がると予測している。屋根に付ける家庭用の太陽光発電設備量は、現状より倍増し、世界全体で1億台程度に達する見通しだ。商業、産業部門でも、電力の自己消費と蓄電の増加が加速するとみられる。

 

IEA3キャプチャ

 

 家庭用の太陽光発電市場は人口当たりの普及率でみると、オーストラリア、ベルギー、オランダ、カリフォルニア州、オーストリア等が高い比率になるという。残念ながら日本市場は下位に沈んでいる。

 

 報告書は、再エネ成長の柱になるとみられるDPVにしても、成長を持続可能にするには、重要な政策面の対応、特に発電電力の買い取り制度(FIT)の改善が必要、としている。これらの制度面での改善が見込めないと、成長は続けてもシステムコストの上昇や、グリッドとの接合等での課題を克服できないリスクもあると指摘している。

 

 IEAは各国政府に対して、小売り電力向けのFIT政策等を改善することで、電力会社や政府等によるDPVへの投資を促進するできるとしている。DPVシステムが普及すると、それぞれを接続する既存のグリッド事業のビジネス機会も高まるとしている。

 

IEA4キャプチャ

 

 その他の再エネ事業では、再エネ熱供給は5年間で5分の1の増加が見込まれる。主な導入国は中国、EU、インド、米国等だ。再エネ熱と再エネ発電の連動化も進み、再エネ発電による熱供給は40%以上増加する見込みだ。しかし、再エネ熱供給はまだ十分には開発されておらず、熱供給に占める再エネ分の比率は24年でも12%以下に留まる。

 

 バイオ燃料は現在、輸送部門での再エネエネルギー供給分の約90%をカバーしており、今後さらに25%増が見込まれる。特に成長が著しいのはアジア、その中でも中国での増加が顕著になる。中国ではエネルギー安全保障の観点と、大気汚染対策の観点で、バイオ燃料に力を入れていく。

 

 輸送部門全体での再エネ電力の使用は、電気自動車の急速な普及見込みもあるが、5年後でも全体の10分の1程度にとどまる見通しだ。また全輸送用燃料需要に占める再エネ燃料・電源等の需要は5年後でも5%以下の見込みという。

 

https://www.iea.org/newsroom/news/2019/october/global-solar-pv-market-set-for-spectacular-growth-over-next-5-years.html

https://www.iea.org/media/presentations/Renewables-2019-Launch-Presentation.pdf