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環境省の「グリーンファンド(地域低炭素投資促進ファンド事業)」累積赤字12億円。運営機関は「長期収益性はプラス」と説明。「グレーファンド」の懸念も(RIEF)

2019-10-31 15:04:39

GF1キャプチャ

 

 政府が推進する官と民間が出資資金を共有する「官民ファンド」の多くが赤字であることが報道されたが、そのうち、環境関連では環境省の肝いりで設立された「グリーンファイナンス推進機構」のグリーンファンド(地域低炭素投資促進ファンド事業)も累積12億円の赤字を積み上げていることがわかった。

 

 国会等で指摘された官民ファンド13ファンドは2018年度末で5800億円の利益をあげているが、安倍政権下で設立された10ファンドに絞ると、同年度末で323億円の累積赤字になっているという。このうち、環境関連では環境省が「グリーンファンド」としてアピールしてきた地域低炭素投資促進ファンド事業の12億円の累積赤字が含まれる。

 

 ファンドを運用する一般社団法人「グリーンファイナンス推進機構」は環境省の所管で、2013年に設立された。「低炭素社会の創出等のために金融に関する事業」等を主な業務内容としている。具体的には地域等で計画される低炭素化プロジェクトに出資し、民間資金の呼び込みを促すことで事業を後押しするという。

 

 いわば「リスクマネー」としての役割を担う形だ。対象事業は「CO2削減事業」と「地域経済を元気付ける地域主導型事業」としている。機構のHPによると、13年以来、17年までに26件の案件に出資している。

 

東京新聞10月30日朝刊より
東京新聞10月30日朝刊より

 

 ただ、当初から低炭素事業の事業性を評価する官の審査力への疑問の声は少なくなかった。実際に初年度の13年度に出資した6件の案件では18年度までに合計6億5500万円を出資しているが、18年度時点で全体の約5%相当の3400万円の評価損を計上、以後の出資分も毎年、評価損を出している。

 

 対象事業にはファンドからの出資と、事業者自身の自己資金、それに地元金融機関等からの投融資が投じられる。事業が順調だと資金繰りも問題ないが、事業がうまくいかないと、まずファンドの資金に損失が振り向けられるケースが多いとされる。機構の事業審査力の乏しさにも疑念が向けられている。

 

 官民ファンドなので「補助金」的な性格もあるとの見方もできる。だが、機構では事業全体のKPI(主要業績指標)として、機構全体の収益性は1.0倍以上を目標値として掲げている。18年度の実績値では、「1.002倍」を達成したと記載している。累積赤字12億円と報じられているのに、長期収益性がプラスと開示しているわけだ。

 

 ファンドの資金は明らかに税金。ただ、機構のサイトを見る限り、赤字の理由、評価損の理由等の説明は見当たらない。グローバルにESG要因の情報開示が機関投資家や資産運用機関に求められる流れが強まっている中で、日本の環境省の「グリーンファンド」の「グレー(灰色)度」が気になる。

 

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/CK2019103002000172.html

http://greenfinance.jp/gf_index.html