HOME11.CSR |ナイキ(Nike)、米環境NGOと共同で、北極圏航路の利用を拒否する「北極海航路企業誓約」を制定。同地域の脆弱な生態系の影響回避を優先。GAPやH&Mなどすでに賛同。海運企業にも呼びかけ(RIEF) |

ナイキ(Nike)、米環境NGOと共同で、北極圏航路の利用を拒否する「北極海航路企業誓約」を制定。同地域の脆弱な生態系の影響回避を優先。GAPやH&Mなどすでに賛同。海運企業にも呼びかけ(RIEF)

2019-11-19 18:06:42

Nike1キャプチャ

 

 スポーツグッズ大手のナイキは、米環境NGOのオーシャン コンサーバンシー(Ocean Conservancy)と共同で「アークティック・シッピング・コーポレイト・プレッジ(Arctic Shipping Corporate Pledge :北極海航路企業誓約)」を策定した。温暖化で海氷の融解が進む北極圏を海運航路化する期待が出ているが、海運の増加は、脆弱な北極圏の生態系に大きな影響を与える懸念があるとして、自社製品の配送に同航路を使用しないよう海運業者に要請する宣言だ。

 

 一般的に、NGOや国際団体の宣言に対して、企業は賛同署名するというパターンが多い。今回のナイキとCOの連携は、ナイキ自体が「誓約」をNGOと共同宣言し、他の企業の賛同を求める形。企業が一歩、前に出て、他の企業を巻き込むCSR活動として注目される。

 

 すでにナイキとCOの呼びかけに対して、ベストセラー、コロンビア、GAP、H&M、カーリング、利豊、PVHなどの衣料品、消費関連企業が署名した。海運業もCMA CGM、長栄海運、Hapag-Loyd、MSCが署名している。日本企業はまだ見当たらない。

 

 誓約は、北極圏は他の地域に比べて、温暖化の影響を2~3倍早く受けることを指摘。その影響は海氷の減少、人類が想定していないような海洋生態系の変貌、同地域で生活する住民の生活の変化等を引き起こすと警鐘を鳴らしている。

 

開発が想定されるTrans-shipment Routes
開発が想定されるTrans-shipment Routes

 

 海氷減少で航海の可能性が高まることは、北極圏周辺の人々や先住民族にとって、ローカルな航海の機会が広がることは望ましい面もあるとしながら、グローバル海運のルート(Trans-Shimpent Routes)が開発されて、大型のコンテナ船等が同ルートでCO2排出量を増大させることへの危惧を示している。

 

 消費財産業は、そうした海運の荷主となる。このため、現在、CO2排出削減活動をグローバルに推進している企業として、北極圏に住む人々や、海洋生活、エコシステムに影響を与えるTrans-shimpent Routesを利用することを拒否する、との誓約を打ち出している。

 

 同様の宣言を他の消費財企業と、海運企業に求めている。また、こうした誓約に賛同しない企業もいることを理解したうえで、予防的な北極海運の実例を促進する行動も実践するとしている。

 

事故多発のリスクも
事故多発のリスクも

 

 ナイキのEVP チーフ・アドミニストラティブ・オフィサーで法務担当責任者のHilary Krane氏は「ナイキの存在は、アスリートの役に立つためにある。そのため、ナイキはCO2排出量と廃棄物排出をゼロにする『Move to Zero』に取り組んでいる。気候変動はアスリートの練習や試合への影響に限らず、スポーツを楽しめるかどうかにさえ影響を与える。今回の『誓約』で、私たちは地球を守り、北極圏を保護するために役立ちたいという明確な選択を行った」と説明している。

 

  連携するOCのCEO、Janis Searles Jones氏は、「北極海横断航路の危険性は、その航路の利用から見込まれる利益よりも大きい。海上輸送によるCO2の影響増大を無視できない。われわれは、ナイキが北極海を健全に保つことが誰にとっても責任のあることであり、大事なことだという認識をしてくれたことを賞賛している。今回の発表で、世界の海運業のCO2排出量を削減するための追加的なコミットメントが広がることを期待している」と述べている。

 

https://nike.jp/nikebiz/news/2019/11/15/2908/

https://purpose.nike.com/arctic-pledge

https://oceanconservancy.org/protecting-the-arctic/take-the-pledge/