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日本政府、COP25の場でも、途上国向け石炭火力発電事業への公的金融機関による援助・融資継続姿勢を堅持。JICAとJBICの両公的金融機関がファイナンス(各紙)

2019-12-10 21:58:51

JICA2キャプチャ

 

  各紙の報道によると、日本政府は、発展途上国での石炭火力発電所建設事業への公的支援・融資を、今後も継続する方針を、スペイン・マドリードで開く国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の場でも堅持する。政府の意向を受けて国際協力機構(JICA)が円借、国際協力銀行(JBIC)が融資で、石炭火力輸出を推進する路線を進める。

 

 共同通信が配信した。COP25では温暖化を加速する石炭火力発電の廃止を求める声が高まっている。CP25に参加した環境NGOから、日本は石炭関連事業を推進する国として「化石賞」を贈呈されている。今回の政府の石炭火力推進方針の再確認は同賞にふさわしい行動ということになる。

 

  政府はインフラ関連の輸出促進のためにまとめた「インフラシステム輸出戦略」で「石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、当該国から要請があった場合は、原則として世界最新鋭の発電設備について導入を支援する」と、条件付きでの石炭支援の実施を明記していることも、こうした姿勢の表れといえる。

 

JICA1キャプチャ

 

 「戦略」に盛り込んだ世界最新鋭の発電設備とは、超々臨界圧石炭火力発電(USC)を指すとみられる。USCのCO2排出量は、同規模のガス火力発電所よりも多いことが指摘されている。

 

 グテレス国連事務総長は2020年以降の石炭火力発電所の新設については、USCを含め、中止するよう各国に求めている。これに対する日本政府の回答を、小泉進次郎環境相が11日に演説で明らかにするとみられているが、政府内の調整で「現状維持」を政府方針とすることが確認されたという。

 

 政府関係者は「エネルギー需要が急増するアジアの途上国を中心に石炭火力のニーズがある。現状で輸出戦略を見直す状況にはない」として支援継続を明言した。途上国への支援継続の一方で、国内での新規継続は中止するのかという点は明言しておらず、内外継続方針を変えないようだ。

 

 JICAは今年6月、バングラデシュでの石炭火力発電事業の建設費として、1431億円余を限度とする円借款を同国に貸し付ける契約に調印している。一方のJBICも4月に、ベトナムの石炭火力建設事業に11億9900万㌦(約1300億円)を限度とする融資を決定。日本貿易保険が事業の融資保険を引き受けるなど、公的資金による海外の石炭火力建設支援が相次いでいる。

 

JBIC3キャプチャ

 

 共同通信によると、JICAは「これまでも(輸出戦略など)政府の方針に沿う形で援助をしてきた。今後も同じだ」とコメントしているという。JBICも融資を続ける方針に変わりはない。

 

 しかし、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化の被害を最小限にするため、電力供給に占める再生可能エネルギーの割合を2050年に70~85%に引き上げて、石炭火力発電はほぼゼロにする必要があると指摘している。再生エネルギー発電は価格低下が進み、先進国でも途上国でも導入が拡大している。

 

   またJICAが、海外向けに「キレイで優しい、日本の石炭火力発電」と表現したプレスリリースを発表していたことも明らかになった。海外の行政官や技術者向けの研修施設のJICA九州国際センターが昨年1月に実施していた。「世界中の石炭火力発電所を日本のものに置き換えた場合、二酸化炭素の排出量を大幅に削減できる」とアピールする内容だ。

 

 環境保護団体は「「明らかに石炭火力発電を売り込む意図」と批判している。JICA自体は、同リリースについては「日本の効率的な発電技術や管理技術の習得が研修の目的で、売り込んでいるわけではない」と説明しているが、リリースには「自国への技術・設備の導入を検討し、帰国後に所属機関に提案することが目的」と明記しているという。

 

 国際環境保護団体が昨年2月に発表した調査結果では、2017年時点で、20カ国・地域(G20)の海外石炭関連事業への支援は少なくとも130億㌦(約1兆4000億円)に上り、過去5年間で最高。機関別の支援額は中国輸出入銀行がトップで、2位がJBIC、3位が日本貿易保険だった。

https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019121090135647.html