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商船三井、LNG燃料供給船の建造資金を同社初のグリーンローンで借り入れ。仏銀BNPパリバ、中国輸出入銀行から。ただし借入額は開示せず。VigeoEirisが「中間」評価(RIEF)

2019-12-24 08:55:50

shousen5キャプチャ

 

 商船三井は、同社が保有・管理する世界最大級のLNG燃料供給船の建造資金を、仏銀BNPパリバと中国輸出入銀行(CEXIM)からグリーンローンとして借り入れると公表した。建造する船は、仏エネルギー大手トタルの発注によるもので、2020年から北欧州で、LNG燃料メガコンテナ船にLNG燃料を供給する予定。ただ、借入額は開示しておらず、環境改善効果の情報が十分には投資家に伝わらない恰好だ。

 

 今回のグリーンローンは、商船三井の100%保有する特別目的会社の「Emerald Green Maritime Limited (EGM)」が契約上の借主となる。商船三井のグリーンローン・フレームワークに基づいて組成された。

 

 LNG燃料供給船向けのグリーンローンは、世界でも初めての取り組みだ。ローンのグリーン性については、英仏のESG評価会社のVigeoEirisが、グリーンローン原則(GLP)への適合認証を付与した。

 

LNG燃料供給船
LNG燃料供給船

 

 ただ、対象となる船舶が、化石燃料としては石炭等よりもCO2排出量の少ないLNGである点で、Vigeo Eirisは、「LNGは他の燃料(バイオ燃料等)に比べて、最大のCO2削減ではない。だが、長距離航海をするグローバル船舶産業の、規模の大きいCO2削減には最適なオプションだ」と説明している。

 

 いわゆる「移行期の選択肢」の位置づけで、Vigeo は3段階の認証レベルで、中間の「Moderate」と評価した。Vigeoは、ESGの観点から15の問題事業の分類をしており、その中には、石炭やタールサンド、シェール油等とともに、化石燃料産業も「問題事業」として扱っている。

 

 Vigioは、商船三井に関連する「問題事業」として、アルコール事業と化石燃料産業の2件を抽出している。商船三井では、傘下の商船三井客船が運航するクルーズ船「にっぽん丸」の船内でアルコール販売等を手掛けているためだ。ただ、売り上げに占めるアルコール事業の比率は5%以下。「限定的な関与」と判断された。

 

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 もう一つの化石燃料産業については、全売り上げの10~20%が同産業関連事業で占められていると推計。さらに化石燃料産業向けの海運事業では、高炉用の石炭や鉄鉱石、エネルギー関連の輸送事業での売り上げ比率は23%を占める。化石燃料輸送事業には、保有船舶の36%が該当する。

 

 こうしたことを踏まえ、Vigeoは同社の化石燃料輸送の売り上げを全体の10~20%と推計した。そのうえで、商船三井の化石燃料産業関連の事業活動について、採掘などの上流ビジネスと、販売等の下流ビジネスの中間にある「中流ビジネス」と評価した。

 

 グリーンローンを提供するBNPパリバ・東南アジア地域海運産業担当の最高責任者マシュー・フォレスト氏は「クリーンな代替燃料としてLNGの活用が求められる海運産業で、LNG燃料供給船は重要な役割を担う。海運業界はカーボン排出量の大規模な削減と、サステナビリティパフォーマンスの改善に向けた急速な変化の時期にある。BNPは船舶金融とサステナブルファイナンスの両分野で、グリーンイニシアチブを推進していく」と指摘している。

 

 同じくローンを提供するCEXIMもこれまで、グリーンクレジットやグリーンファイナンス理念を支持している。現在も、サステナビリティや環境保護に適応した環境に優しい船舶をサポートすることに力を入れているという。

 

 商船三井グループは2018年8月に国内でグリーンボンドを、19年7月には同じくサステナビリティボンドを発行している。ただ、グリーンローンの借り入れは今回が初めて。

https://www.mol.co.jp/pr/2019/19100.html

https://www.mol.co.jp/pr/2019/img/191223_Vigeo_Eiris_SPO.pdf