HOME |スペイン生まれの「羽根の無い風力発電機」が日本でも2020年に販売へ。風の振動で発生する空気力学の「渦励振」を活用。低周波公害も、バードストライキも無し。いいかも(RIEF) |

スペイン生まれの「羽根の無い風力発電機」が日本でも2020年に販売へ。風の振動で発生する空気力学の「渦励振」を活用。低周波公害も、バードストライキも無し。いいかも(RIEF)

2019-12-31 08:27:02

 

 風力発電大国スペインで開発された「羽根の無い風力発電」が2020年に日本市場でも登場する。スペインのスタートアップのVortex Bladeless社がその開発企業だ。小型ロケットのような形をした円筒形の柱が、風を受けて振動することで発生する「渦励振(うずれいしん)」と呼ぶ空気力学的な現象を利用するという。

 

 渦励振とは、各物体が持つ固有振動数と、風が円柱などの物質に当たって発生する空気の渦の周波数が一致した場合に、共振を引き起こし振幅が増大する現象のこと。建築物を造る際に、この共振が起きると、建物が不安定になるため、厄介者とされている。

 

 実際に、1940年にアメリカのタコマ・ナローズ橋が、この共振現象の影響で崩壊した事件がある。だが、この事件の映像を見た開発者の一人が、「橋を壊すほどのエネルギーがあるのならば、そのエネルギーをコントロールして発電できるのでは」と考えて実現したという。

 

誰かに似ている??
サンタ帽をかぶって、誰かに似ている??

 

 円柱状の柱のようなシリンダーは、非常に頑丈で、下部を固定された状態。一方、シリンダーの上部は固定されていない。このため、丸みを帯びたシリンダーの周りを風が通過すると、空気の流れが変化し、空気の渦が周期的に発生する。この渦の力が十分に強いと、シリンダーが振動を始め、風の横力と共振する。

 

 空気を受けて物体が不安定になることを、渦誘起振動と呼ぶ。筒の中にはコイルと磁石を用いた特許取得済みの発電装置が内蔵されており、上部が左右に振動することでエネルギーを生み出す仕組みという。

 

Mumin5キャプチャ

 

 ただ、空気の渦の周波数は一定でないため、渦に合わせて風力発電機側の振動数を変える必要がある。Vortex Bladeless社は、自動的に発電機側の振動数を調整する独自のチューニングシステムを開発した。これにより、風速3mの弱い風からでも共振を引き起こし、発電を開始・維持できるという。

 

 開発中の風力発電機「Vortex Tacoma」の円筒状のシリンダーは高さ約2.7m。軽さと強度を保つために炭素繊維とガラス強化繊維(FRP)素材を使っている。商用化の場合は、重さ約15kg、発電量100W/hを提供できる想定だ。

 

 軽さとどこにでも設置できる利便性から、自宅の屋根や庭などにも設置できる。価格は1基あたり200ユーロ前後(約2万4200円)。日本でも、2020年中の販売を目指しているという。どことなく、ムーミンに登場する「ニョキニョキ」に似ている。

Mumin1キャプチャ

 同社は今後、さらに大きな1MWクラスの大型機器も開発中。従来の風力発電機に比べて製造コストは50%以上、メンテナンス費用を80%以上もカットできるという。低コストが可能なのは、通常の風力発電機のように複雑な部品を使わないことが大きい。またメンテナンスに油を使う必要がないので、廃棄する際の費用も安いという。



 発電機の振動周波数は20 Hz未満のため騒音がほとんど生じない。これまでの風力発電では、風車のプロペラ回転音が低周波数問題を引き起こすが、それも起きない。鳥を巻き込むバードストライキ問題や膨大なコスト等の課題を解消できる期待もある。この「ニョキニョキ発電所」が、あちこちに、ニョキニョキ林立するかもーーー。

https://www.altairjp.co.jp/customer-story/vortexbladeless

https://emira-t.jp/topics/10803/?fbclid=IwAR26cDmB-lOa_-hFktvc6pBqFss6isIdx7LVtuGqAE8WZ7HyS2f-FeYR-pk