HOME8.温暖化・気候変動 |グレタさん、ダボス会議を総括。「政財界リーダーたちは、我々の要求をすべて無視した。期待もしていなかったが」。未来を求める若者たちと、現状維持派との「溝」さらに深まる(RIEF) |

グレタさん、ダボス会議を総括。「政財界リーダーたちは、我々の要求をすべて無視した。期待もしていなかったが」。未来を求める若者たちと、現状維持派との「溝」さらに深まる(RIEF)

2020-01-27 13:28:32

Greta11キャプチャ

 

  世界経済フォーラム(WEF)のダボス会議は先週末で終わったが、会議に集まった世界の政財界のリーダーたちに迅速な温暖化対策の実施を呼びかけたスウェーデンの環境活動家、グレタ・ツゥーンベリさんは「リーダーたちはわれわれの要求を完全に無視した。われわれも期待はしていなかった」と述べた。「科学が無視されている限り、起きている事態は『危機』とは理解されない」と気候変動に対するリーダーたちの無理解を指摘した。

 

 (写真は、ダボスでも開いた「スクール・ストライキ」)

 

 グレタさんは21日~24日にスイス・ダボスで開いた会議に出席、世界中から集まった政財界のリーダーたちに対して、「我々の家は今も燃えている。あなた方の無行動が火災を続けている」と危機感を強調。化石燃料への投資や補助金拠出を直ちに止めるよう訴えた。https://rief-jp.org/ct4/98489

 

ダボス会議でフォーラムに参加
ダボス会議でフォーラムに参加

 

 グレタさんは会議を終え、先週末にはダボスのスキーリゾートで、「気候変動対策を求める登校拒否(School Strike)」を仲間と実施した。その抗議行動の前に、彼女は会議を総括して「ここに来るまではWEFにいくつかの要請を持っていた。しかし、そうした要請はすべて無視された。特に期待はしていなかったが」と振り返った。

 

 会議中、グレタさんは2つのフォーラムに出席。化石燃料関連の投資や補助金停止を求めた。フォーラムへの多くの参加者は気候変動対策の重要性には同意しながら、対策を見つけるのは難しいと首を振った。こうした状況についてグレタさんは「リーダーたちは危機に対して行動を起こさず、その理由についての説明責任も果たさない」と指摘した。

 

 そうしたリーダーたちの対応について「科学が無視され、気候変動の事実が考慮されない限り、(オーストラリアの山火事や日本などの自然災害の多発等)の現状は危機とはみなされない。したがってリーダーたちは引き続き、現状を無視し続けるだろう」と冷静に分析した。

 

Greta222キャプチャ

 

 会議中、米財務長官のスティーブン・ムニューシン氏が「気候活動家たちは、化石燃料への投資引き揚げ(Divestment)を主張するが、雇用への影響を理解すべきだ。ツゥーンベリさんは、大学に行って経済学を勉強すべきだ」と皮肉った。これに対して、グレタさんは「そのような批判はトランプ大統領の指摘と同様に、われわれには効果がない」と一蹴した。

 

 ドイツの気候活動家のLuisa Neubauerさんは、期間中、シーメンスのCEOのJoe Kaeser氏と面談、同社がオーストラリアで進めている石炭開発事業の「Adani Project」向けの鉄道シグナルを供給する契約の放棄を訴えた。

 

 Adani事業は、世界最大の石炭開発事業の一つとされる。Neubauerさんは、「こうした開発計画は投資家や企業によって抑制されるべきだ。そうしないとパリ協定が目指す『2℃』目標の達成からはるかに遠ざかることになる。パリ協定を本当に守るつもりならば、そうした契約はキャンセルすべきだ」と強調。さらに「これは過激な要求ではない。合理的な要求だ」と述べた。

 

 パリ協定を成立させた世界のリーダーたち。協定を掲げながら、その目標を遠ざけるような企業活動を展開していることは、確かに合理的ではない。ムニューシン氏が主張するように、目標達成よりも雇用確保を優先するとしても、気候変動の激化で、日本の台風被害の修復はいまだに十分に進んでおらず、オーストラリアの火災で焼け出された人々の雇用も吹き飛んでいる。

 

 米ゴールドマンサックスの銀行家だったムニューシン氏こそ、体に染みついた「略奪型資本主義の経済実践」から脱却して、経済学を踏まえたバランスのとれた経済政策を一から学び直すべきだろう。