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日本の技術が開発した「球状太陽光電池」。三次元受光により、通常の太陽光電池の3倍の光をキャッチ。窓や布型など、多様な形に応用可能。スフェラー・パワー社(京都)(RIEF)

2020-01-31 22:38:51

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 京セミコンダクターの事業を継承したスフェラー・パワー社(京都)が開発した微小な球状太陽電池が注目を集めている。受光面全体が球面のため三次元受光が可能で、通常の太陽電池に比べ、約3倍の光を採り込める。細い糸状の導電素材でつなぎ、窓などに設置するシースルータイプや、テキスタイル型も可能という。

 

 (写真は、球状太陽光電池を使った同社の案内サイン板)

 

 独自開発の球状太陽電池は、その名も「スフェラー(Spherical(球状で)と、 Solar(太陽の)を合わせた造語)」。1~2mmの小さな球状で、球の上下に電極を持つ。三次元受光によって、これまでの太陽光電池のように、受光面を必ず太陽の方角へ向けなければならないという制約から解放される。

 

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 垂直な壁面や曲面上へも配置できるほか、立体的な発電モジュールも構成できる。組み合わせることで、サイズは超小型から大型まで応用可能だ。また小さいので他の部材や部品の中に一体的に組み込めば、高透過型の建材一体型太陽電池システム等として利用できる。

 

 原料は、砕けて小さくなったシリコンを使う。シリコンを一度溶かし、サイズの揃った溶けたシリコン粒にする。シリコン粒が冷えて固まると球状のシリコン粒になる。この粒がセルを作る元だ。シリコンの粒の表面に電流を流すpnジャンクションを形成、上下に電極をつけてセルを作る。

 

3倍の受光率
3倍の受光率

 

 一粒でも発電できるが、これらのセルを結線して網目状のメッシュにして、発電量を増やすことができる。あらゆる方向から受光できる特徴を生かして、立体的な発電モジュールを作れるほか、光を通す割合が大きいため、窓用のシースルータイプの発電素材として利用できる。

 

 すでに応用策として、消費者向けのランタン製品のほか、北海道東川町の複合交流施設では独立電源タイプのガーデンライトとして採用されている。京都府内の自治体では、シースルータイプに加工した太陽電池を庁舎の案内サインに採用している。大手ガラスメーカーと連携して窓用建材の開発も進んでおり、年内にも商品化する計画という。

 

発電効率は通常のものより高い
発電効率は通常のものより高い

 

 球状太陽光電池を開発したのは、現在会長の中田仗祐氏。三菱電機で人工衛星用の太陽電池の研究に携わった経験もある。1980年に京セミを立ち上げ、LEDやフォトダイオードの開発・製造ビジネスを展開。ある時、ふと疑問を抱いたという。「太陽電池はなぜ平面でなければならないのだろうか」。

 

 太陽は一日を通して東から西へと移動し、地上でも、直射光だけでなく、周りの環境によって反射する光や拡散する光が存在する。「太陽電池を球面状にすれば、光の利用効率が一番よいのではないか」。中田氏はこうした着想から技術開発を進めた。

 

真空カプセルを使って、微小重力状態を作り出す。
真空カプセルを使って、微小重力状態を作り出す。

 

 その頃、京セミは北海道の上砂川町に新しい工場を建てることになった。同町は、もともと炭鉱の町。炭鉱の縦穴を利用して無重力実験センター (JAMIC) を整備していた。中田氏は、同センターを使って微小重力状態でのシリコンの結晶化に成功した。球状太陽光電池は、京都生まれで、北海道育ちというわけだ。

 

 従来型の太陽光発電パネルは、国内市場でも、安価な中国製等に席巻されている。だが、球状太陽光電池は日本の技術による起死回生の「一手」になるかもしれない。

 

http://sphelarpower.jp/technology/