HOME10.電力・エネルギー |世界のエネルギー由来のCO2排出量、3年ぶり前年比横ばい。先進国での再エネ等が効果。ただ気候変動激化に対処するには限定的。さらなる削減が必要。国際エネルギー機関(IEA)指摘(RIEF) |

世界のエネルギー由来のCO2排出量、3年ぶり前年比横ばい。先進国での再エネ等が効果。ただ気候変動激化に対処するには限定的。さらなる削減が必要。国際エネルギー機関(IEA)指摘(RIEF)

2020-02-12 17:48:25

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  国際エネルギー機関(IEA)は11日、世界のエネルギー由来のCO2排出量が2019年には、前年比横ばいの約333億㌧にとどまったと発表した。横ばいは16年以来3年ぶり。先進国市場を中心に、風力、太陽光発電の普及や、石炭から天然ガスへの転換などが進んだことが理由だ。IEAは温暖化対策の効果は出ているが、気候変動を緩和させるには一層の削減が必要と指摘している。

 

 昨年の電力部門からのCO2排出量はグローバルベースで前年比1.7%減(1億7000万㌧減)となった。発電部門の再エネ転換、電力消費部門の省エネ促進等のほか、温暖化の影響で冬場の気温低下がマイルドだったことから暖房減少などの影響が重なった。

 

 特に先進国のエネルギー関連のCO2排出量は前年より3億7000万㌧減り、削減率は3.2%減と1980年代後半の水準にまで下がった。再エネ、省エネ効果のほか暖房減少によるCO2削減効果が1億5000万㌧あったとみられる。

 

地域別の増減割合
地域別の増減割合

 

 電力部門に占めるCO2排出量の比率は、ほぼ6.5%減と、過去10年間の平均の3倍も速い減少ピッチとなった。減少率は過去10年間で3倍に増えている。1kW時当たりのCO2排出量は340gで、これは現時点で化石燃料発電のうちで、最も効率的とされるガス火力発電からの排出量よりも低くなっている。それだけ電力部門に占める再エネ発電の比重が高まっていることを示す。

 

 発電別にみると、先進国での石炭火力発電の割合はほぼ15%減と大きく落ち込んだ。代わりに、再エネ発電の普及で先進国では年間1億3000万㌧のCO2排出量が抑制された。

 

 再エネの中では風力が最大のシェアを保有、発電量の伸びは前年比12%増と急増した。太陽光発電はさらに伸び、約28%増。火力発電の燃料を石炭からガスへ転換することで、1億㌧のCO2が削減された。特に、シェールガス開発が進む米国でのガス転換が効果をあげた。

 

 先進国での電力需要の推移

先進国での電力部門からのCO2排出量の推移

 

 国別では、米国のCO2排出量が1億4000万㌧減り、前年比2.9%減となった。この結果、総CO2排出量も2000年のピーク時よりほぼ10億㌧減って48億㌧と、50億㌧を切った。この削減効果はトランプ政権の政策によってではなく、石炭火力発電がガス火力や再エネ電力の競争で敗れ、閉鎖が相次いだという「市場の力」によっている。

 

 実際に、米国の石炭火力からのCO2排出量は15%減と大きく下がった。米国内での平均ガス価格は前年比45%も下落、石炭火力を駆逐した。ガス火力の比率は電力全体の37%と過去最高シェアとなった。また電力消費自体も、暖冬の影響や夏場の気温上昇の抑制等で下がった効果もある。

 

 日本のエネルギー関連CO2排出量は4.3%減で4500万㌧減った。削減率は2009年以来最も大きかった。IEAは日本のCO2削減量の40%は原発再稼働の影響とみている。昨年中の再稼働原発はなかったが、前々年の18年には関電の大飯原発3、4号機、九州電力の玄海原発3、4号機がそれぞれ稼働し、それらが19年にはフルに再稼働効果を発揮した形だ。

 

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 つまり、日本の場合、石炭から再エネへの転換ではなく、石炭から原発への転換でCO2削減が進んだことになる。ただ、四国電力の伊方原発3号機のように、再稼働決定後に裁判所で差し止め命令が認められるなど、安全性リスクを必ずしもクリアできていない問題がある。

 

 経済成長が著しい新興国・途上国では先進国とは逆に、CO2排出量は4億㌧増え、全体で220億㌧となった。これら増加量の大半を占める約80%はアジア諸国からの排出だ。アジアではエネルギー利用の50%超を依然、石炭火力発電が占めている。

 

 このうち中国のCO2排出量は依然、増加はしているが伸び率は鈍化している。経済成長の鈍化と、再エネ等のウエイト増加が影響しているとしている。また19年には7機の大規模原発がフル稼働し、CO2排出量削減を後押ししたとしている。

 

 インドの電力部門からのCO2排出量もわずかだが減少に転じた。1973年以来初めて。モディ政権が力を入れている再エネ発電の効果が表れてきたとみられる。ただ、運輸部門等では引き続き化石燃料需要が続いている。

 

https://www.iea.org/articles/global-co2-emissions-in-2019