HOME10.電力・エネルギー |英蘭シェル等。オランダ沖で開発する大規模洋上風力発電の電力活用の水素製造プロジェクト「NortH2」立ち上げ。2040年には「グリーン水素」を年間80万㌧供給(RIEF) |

英蘭シェル等。オランダ沖で開発する大規模洋上風力発電の電力活用の水素製造プロジェクト「NortH2」立ち上げ。2040年には「グリーン水素」を年間80万㌧供給(RIEF)

2020-03-04 18:04:15

 

 英蘭シェルとオランダガス会社のGasunieは、オランダ北部のフローニンゲン市で大規模洋上風力発電設備と連動した水素製造プロジェクト「NortH2」を立ち上げた。水素製造電源を天然ガス等に頼る現状の水素製造に対して、風力発電との連携で「グリーン水素」を大規模に製造、2040年までには年間80万㌧の水素エネルギーを供給する計画だ。

 

 シェルオランダとGasunie、地元のフローニンゲン港がコンソーシアムを組織した。計画では2030年までに同港沖に、3~4GWの発電容量を持つ洋上風力発電設備を建設、その電力を使って「グリーン水素」を製造するという。風力発電設備は2040年には10GWにまで拡大する。

 

 水素の製造には複数の方法がある。一つは水酸化ナトリウム等の電解質を溶かした水に電気を流し、電気分解で水素を作る方法。天然ガスに含まれるメタン (CH4)等の水素と炭素でできている物質を水蒸気と化学反応させ、水素を発生させる方法もある。後者の場合、水素とともにCOやCO2も発生するので、それらを除去する必要がある。

 

風力発電の電力から作った電力で燃料電池車が走る
風力発電の電力から作った電力で燃料電池車が走る

 

 EU域内での現在の水素製造は、主に後者の天然ガスを活用する方法が多い。シェル等では、EUが進める欧州グリーンディール(EGD)や、オランダ政府の気候対策である「気候アコード」等に合致するには、「グリーン水素」が望ましいと判断、今回のNortH2計画を立案した。

 

 同計画では、前者の電気分解の手法で、電気分解に使用する電気を風力発電でまかなうことで純粋な「グリーン水素」を製造する。想定では発電量が10GWに拡大する2040年には、水素製造量は年間80万トン。CO2削減量は年間700万㌧となる。

 

 計画は今年中にフィージビリティスタディを開始する予定。計画の実現には、オランダ政府およびEUからの補助金の獲得、他のパートナー企業との連携等の課題も抱えている。順調に進行すれば、2027年には最初の風力発電設備が稼働する予定だ。

 

製造した「グリーン水素」はガスネットワークを活用して国内外に供給
製造した「グリーン水素」はガスネットワークを活用して国内外に供給

 

  洋上風力発電での発電容量はオランダの1250万世帯の電力を賄える規模を目指す。計画の中核となる大規模な電気分解設備は、フローニンゲン州のエームスハーヴェン港に建設する予定。コンソーシアムは同設備についても洋上に建設する案も検討しているという。

 

 製造した水素は、オランダ国内だけでなく、他のEU加盟国にも輸出する。当初は産業用に使うことを想定しているが、将来は、燃料電池車の水素電源等への使用も検討しているという。水素の配送・貯蔵にはGasunieのガスパイプライン等のガスインフラ設備を活用する計画だ。

 

nroth5キャプチャ

 

 シェル・オランダの代表Marjan van Loon氏は「われわれはオランダを水素社会のグローバル先駆者として位置付けている。またオランダ政府が推進する『気候アコード』の達成に貢献するとともに、エネルギー転換を加速することに寄与する」と計画の意義を強調している。

 

 GasunieのCEO、Han Fennema氏も「オランダは水素経済への移行でリーダー的な立場にある。北海で創った風力発電の電力と、物流ハブの港湾、産業クラスターの『グリーン分子』化、適切な輸送ネットワークへの転換等を進めていく。将来のオランダ北部は欧州の水素経済の中心になる」と期待を表明している。

https://www.gasunie.nl/en/news/europes-largest-green-hydrogen-project-starts-in-groningen

 https://www.process-worldwide.com/europes-mega-green-hydrogen-project-north2-to-kick-start-in-the-netherlands-a-910069/