HOME13 原発 |東京電力福島第一原発事故前に、巨大津波を想定して中部電力や日本原電などが追加対策を実施していたことが判明。「当時は公表せず」というが、東電は他社の動きを知らなかったのか(各紙) |

東京電力福島第一原発事故前に、巨大津波を想定して中部電力や日本原電などが追加対策を実施していたことが判明。「当時は公表せず」というが、東電は他社の動きを知らなかったのか(各紙)

2020-03-16 00:56:26

NHK1キャプチャ

  NHKの報道によると、東京電力福島第一原子力発電所の事故の前に、東京電力以外の複数の電力会社が想定を超える津波の襲来を想定した対策を進めていたという。NHKは中部電力と日本原子力発電が、実際の対策を取っていたことを報道した。しかし当時はその対策のほとんどが発表されていなかった。専門家は公表されていれば業界全体として対策が進んだ可能性もあったとして、東京電力や電力業界の体質の検証を求めている。

 2011年3月11日の東日本大震災で、東電福島第一原発は東電の想定を超える15m余の津波に襲われ、メルトダウンを起こした。その後、NHKが事故の前の電力各社の津波対策を取材したところ、中部電力と日本原子力電力において、巨大津波対策を実施していたという。

 原発静岡県にある中部電力・浜岡原発では、想定を超える巨大津波で地下トンネルから海水が敷地内に入り込む可能性を考え、事故の前に防水性をより高めた扉の設置を進めていた。また、配管の隙間をふさいで海水の流入を防ぐ工事を進め、高さ10m以上の防潮堤の設計にも着手していた。

NHK2キャプチャ

 一方、日本原電は浜岡原発を視察したうえで、茨城県の東海第二原発で想定を超える津波対策として盛り土の造成や原子炉建屋の防水などを進めた。しかし、こうした対策はほとんどが発表されていなかった。公表しなかった理由について、中部電力は「一部の津波対策が社として意思決定されていなかったため、公表していなかった」と説明しているという。



 日本原電は東京電力の方針に合わせ、国に巨大津波への対策について一部、報告しないようにしていたという。ただ、津波対策を未発表にした理由についてはこれまで公にしていない。

NHK3キャプチャ

 多摩大学大学院の田坂広志名誉教授は、2社が対策を進めていたことを評価したうえで、公表しなかった理由について、「一部の会社が対策を進めると、ほかの社もやらざるをえなくなるし、住民からも無用の不安を持たれるのではないかと、心配する文化が業界にはある」とコメントしている。

 同氏はそのうえで、「公表されていれば、メディアも取り上げて世の中が注目し、ほかの電力も動かざるをえなくなる。そうなれば、東京電力も対策を早めに打っていたかもしれない」と述べている。

 ただ、NHKの報道では、日本原電は中部電力を視察したうえで、東海第二原発の津波対策を上積みした、と説明されている。とすると、中部電力が対策を講じているという情報は、少なくとも電力業界の中では知られていた可能性が高い。日本原電は知っていて、業界トップ企業の東電が知らなかったとは考えにくい。

NHK4キャプチャ

 NHKは東京電力や電力業界の体質の検証が重要だと、田坂氏の発言を踏まえて述べている。だが、電力会社の「必要性を知っていても、実施しない体質」が問題であり、その検証は誰がやるのかも指摘すべきだろう。東電を丸抱えしている政府がそうした検証をやるとは思えない。司法の場で、法的な責任を明確にすべきということではないか。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200315/k10012332721000.html?utm_int=news-culture_contents_list-items_002