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神奈川県松田町。地域の自然資源を活用した再エネ導入促進条例を制定・施行。町民の「再エネ享受権」を認定。地域金融機関にも協力行動を明記(RIEF)

2020-04-13 22:13:56

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 神奈川県の松田町は、化石燃料依存社会からの脱却を進めるため、町民に「再生可能エネルギー享受権」があることを宣言した「再エネ利用促進条例」を制定、施行した。町民に「再エネ享受権」を認めた条令は全国でも初めて。同権利を踏まえて、町長に再エネ促進の責務を課すとともに、町民にも再エネ利用促進の責務を問うている。地域金融機関にも、条例に沿って再エネ事業等への協力を求める。

 

 (写真は、松田町の庁舎)

 

 条例は「松田町再生可能エネルギーの利用等の促進に関する条例」で、3月13日に町議会で可決・成立、同月19日に公布・施行された。条例の策定には、町民参加のプロセスを導入、町民のほか学識経験者・町が参加する「松田町再生可能エネルギー普及促進検討会」(座長:亀山秀雄・東京農工大学名誉教授)で、協議を重ねて、案を練った。

 

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 松田町は、神奈川県足柄上郡に位置する人口1万人強の町。世界遺産である富士山を望み、丹沢山系 を源にする酒匂川、中津川の清流と豊かな緑に恵まれた地域で、総面積の約75%を森林が占める。 また、町の下には複数の活断層が存在する。太陽光、風力、バイオなど豊富な自然エネルギー資源を保有している。

 

 条例は、「地域由来の再エネを減災と、地域産業の活性化に生かす」との目標を立て、「基本理念」の中で、「再エネ資源は地域と一体不可分のものとして存する。古来、地域に生活する者は、その恩恵を享受し、これを地域の財産として維持し生活の基盤としてきた」と位置付けて、町民は、そうした再エネ資源を「持続可能な方法により、再エネを享受する権利(地域エネルギー享受権)を有する」と明記した。

 

 対象とする再エネ資源については、①太陽光②太陽熱③バイオマス④風力⑤水力⑥地熱、の6事業を列記。これらの資源を活用するため、町長、事業者、町民、そして地域金融機関にそれぞれの「責務」と「役割」を示している。

 

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 まず、町長の責務としては、町民が保有する「地域エネルギー享受権」を踏まえて、再エネ利用方針を示し、再エネ利用を促進するための必要な措置を実施する、としている。事業者は、享受権を尊重し、取り組む再エネ事業が地域の持続可能な発展に資するために、生活環境と地域社会への貢献に配慮するよう努める、と定めた。

 

 町民の責務は、自らの享受権を踏まえて、再エネの利用に努め、町長の実施する措置に協力する、としている。地域金融機関に対しては、この条例に沿って、再エネ事業と町長の実施方針に協力することを求めている。

 

 町長は再エネ利用指針を定めるとともに、特定の再エネ事業を「地域主導型再エネ事業」として認定するとしている。その条件は、①地域の利害関係者がプロジェクトの大半もしくはすべてを所有②プロジェクトの意思決定は地域コミュニティに基礎を置く組織によって行われる③社会的・経済的便益の多数もしくはすべてが地域に分配される、の3条件のうち2つに該当することを求めている。

 

 加えて、災害時に自立運転可能な装置を装備することで、災害対策に活用できることも条件としている。

 

http://town.matsuda.kanagawa.jp/uploaded/attachment/8324.pdf