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オーストリア、国内で操業を続けていた最後の石炭火力発電所を閉鎖。EUではベルギーに次ぐ「脱石炭火力」を達成。2030年までにEU各国が追随する予定(RIEF)

2020-04-20 18:20:46

Austria1キャプチャ

 

 オーストリアは17日、同国内で操業していた唯一の石炭火力発電所を閉鎖したと発表した。この結果、同国は欧州でベルギーに次いで二番目の「石炭火力フリー国」になった。同国の気候行動・環境エネルギー・運輸相のLeonore Gewessler氏は「歴史的な一歩だ。我が国は2030年までに100%グリーンエネルギー(再生エネルギー)に転換する」と宣言している。

 

 (写真は、操業を停止したフェルバンド社の石炭火力発電所)

 

 発電を停止したのは同国の電力会社フェルバンド(Verbund)社がシュタイアーマルク州のメルラッハ(Mellach)で操業してきた石炭火力発電所。閉鎖は昨年中に決定していた。冬季の暖房需要に対応するため最後の操業を続けていたが、4月に入って暖房需要も低下、予定通りの停止に至った。

 

フェルブンド社の石炭火力発電所に抗議行動をする環境団体のメンバー
フェルバンド社の石炭火力発電所に抗議行動をする環境団体のメンバー

 

 同発電所に対しては地域住民や環境団体が2000年以来、操業停止を求める活動を展開してきた。EU加盟国で石炭火力発電所を全面的に停止したのは、2016年のベルギーに次ぐ。

 

 環境保護団体の「Europe Beyond Coal」のKathrin Gutmann氏は「オーストリアは石炭火力を廃止し、代わりに再生可能エネルギーを促進し、欧州グリーンディール(EGD)を推進することを明確にした。同国が『コール・フリー(石炭無し)』に転じたのは、我々が直面している重要な健康被害や経済影響への対応といえる」と指摘、他の国の追随を期待する姿勢を表明している。

 

 EUではすでに「石炭火力ゼロ」を達成した2カ国のほかに、多くの国々がエネルギー政策での「脱石炭火力」の方針を打ち出している。2025年までに石炭火力廃止を宣言しているのは、フランス(2022年)、スウェーデン(同)、スロバキア(2023年)、ポルトガル(同)、英国(2024年)、アイルランド(2025年)、イタリア(同)など。

 

 その後も、ギリシャ(2028年)、オランダ(2029年)、フィンランド(同)、ハンガリー(2030年)、デンマーク(同)、ドイツ(2038年)などが続く。チェコ、スペイン、北マケドニア等は現在、国内で調整中。

 

 ただ、オーストリアの「脱石炭」宣言に対して、環境団体の一部からは異論も出ている。同国の鉄鋼会社のフェストアルピーネ(Voestalpine)社は製鉄工程で石炭を活用しているためだ。石炭火力発電がすべて閉鎖したことで、同国最大のCO2排出源になる。今後、欧州の環境団体の矛先は、フェストアルピーネに向かいそうだ。

https://www.bundeskanzleramt.gv.at/en/federal-chancellery/the-austrian-federal-government.html

https://www.bmk.gv.at/en.html